父殺そうと机にナイフ忍ばせて…ひきこもり当事者の焦燥と絶望 (2/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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父殺そうと机にナイフ忍ばせて…ひきこもり当事者の焦燥と絶望

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野村昌二AERA
ひきこもり状態にある人を、「甘えている」「怠け者」とラベリングすることはたやすい。周囲が持つ偏見が当事者をさらに生きづらくさせている(撮影/今村拓馬)

ひきこもり状態にある人を、「甘えている」「怠け者」とラベリングすることはたやすい。周囲が持つ偏見が当事者をさらに生きづらくさせている(撮影/今村拓馬)

当事者・経験者の声(AERA 2019年8月26日号より)

当事者・経験者の声(AERA 2019年8月26日号より)

 都内在住の50代の男性は、仕事がうまくいかず25歳の頃から本格的にひきこもっている。同居する母親(87)が亡くなった後が心配だ。母親が残してくれる財産があり経済面の心配はないが、生活面の懸念が大きい。

 男性は学習面での発達障害も抱えていて、その特性から身の回りのことがほとんどできない。食事、洗濯、掃除。申し訳ないと思いながら、生活のほぼすべてを母親に頼っている。

「母はまだ何とか健康ですけど、いつ認知症などでガクッとくるかわからない。自分は入院の手続きもわからない。食事から身の回りの片づけまで、どう生活していけばいいかわかりません」

 AERAが行ったひきこもり当事者と経験者へ向けてのアンケートでは、ひきこもり状態になった事情も現在の状態もさまざまな声が寄せられた(下)。ひきこもる状態と社会参画を繰り返す人もいて、「怠け者」「甘え」といった、社会が持ちがちな先入観とは種類の違う背景や苦しみを多くの当事者が抱えていることがわかる。

 5月、川崎市で児童ら20人が、長年ひきこもっていたという男(当時51)に殺傷される事件が起きた。ワイドショーや週刊誌の一部報道などで、ひきこもりを「犯罪者予備軍」と紐づけかねない動きがあった。筑波大学教授で精神科医として30年近く当事者の問題に取り組んできた斎藤環さんは、「犯罪者予備軍という言葉はヘイトスピーチ」と断じた上でこう語る。

「ひきこもりという言葉が使われ始めて20年経っているが、明らかにひきこもりの人が関わった犯罪は数件しかない。ひきこもりの人もそうでない人も罪を犯すが、前者の犯罪は後者の犯罪に比べ、圧倒的に少ない。統計的にひきこもりと犯罪は関係ないといえます」

 当事者や家族も、相次いで見解や声明を公表。NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京)も、ひきこもり状態にある人について「無関係な他者に危害を加えるような事態に至るケースは極めてまれだ」との声明を発表した。


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