「じゃあどうするか。社会復帰してお金を稼がなければという結論に至ったのです」

 ネットで仕事を探し、50社以上落ちたが最後の1社に採用され、ひきこもり状態から脱出した。会社に勤めながら、ひきこもっている人の役に立ちたいと考えるようになり、ひきこもり相談カウンセラーとして活動している。相手から礼を言われると、生きている価値を感じる。(編集部・野村昌二)

■当事者・経験者の声
虐待、いじめ、パワハラ、性暴力が原因でひきこもるようになった。自室・自宅から出ることはほぼなく、役所や精神科で相談しようとしたけれど、話が通じず相談にならなかった。女性のひきこもりのつらさが伝わっていないと感じる(42歳、女性、当事者) 

幼少期における母親からの精神的虐待で今もひきこもっている。その気になれば遠方にも外出していけるが、外出するまでが大変で、その結果ふだんはめったに外出しない。どのように死を迎えるか、親とのコミュニケーション不全に困っている(57歳、男性、当事者) 

家族とは何げない会話や日常のやり取りの話はするものの、父親はこちらの話したいことを聞く気がない。金銭面での支援、精神的な支援、カウンセリングがほしい。ひきこもりの中には、セクシュアルマイノリティーもいるということも知ってほしい(40歳、経験者) 

就職や仕事のこと、経済的なことを、気楽に話せる知り合いや友人がいない。歯や眼、精神科など頼れるところがない。どこに行けばよいかカンが働かない。川崎の事件で「一人で死んでくれよ」のセリフは今も耳に残っていて消えることはない(48歳、女性、当事者) 

ひきこもりだからといって、頭ごなしに甘えと言わないでください。差別をしないでください。一人の人として、見てください。支援にしても、ひきこもり当事者の意見に沿った支援のありかたを考えてください(46歳、男性、当事者)

AERA 2019年8月26日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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