新たな症状に対し「花粉が例年より多いのか」と感じていた堀さんだが、5月になって花粉症の症状は消えたものの、咳だけは止まらなかったという。同じ月にあった会社の健康診断で要精密検査となり、がんが発覚した。堀さんは言う。

「今思えば、咳が肺がんのサインだったと思います。20歳からたばこを1日平均1箱吸っており、ほかの人よりリスクも高かった。十数年前まではオフィス内や駅のホームでもたばこが吸えた。今より受動喫煙も多かったでしょう」

 放射線と抗がん剤治療で小さくなったがんを摘出し、現在も寛解を維持している堀さん。今ではたばこをやめているが、依然としてまったく吸わない人よりはリスクは高い。

 前出の坪井さんはこう話す。

「禁煙しても、喫煙していない人と同じくらいの発がんリスクになるには10~15年くらいかかると言われます。たばこを吸っていなかった人でも、過去に受動喫煙の環境があれば、注意が必要です」

 堀さんも自覚症状として訴えた咳だが、それ以外の形で肺がんの症状が現れることもある。

「肩の痛みやしゃっくり、頭痛や声のかすれなどの症状が出ることもあります。ただ、呼吸器以外に症状が現れる場合はすでに肺以外に転移しており、ステージ2以上に進行している可能性が高いです」(坪井さん)

 ほかのがんでは見られない肺がん特有の症状もある。

「肺の外側部に発生する末梢型の肺がんが増えたことで症状が出ることは少なくなっていますが、血痰は肺がん特有の初期症状と言えるでしょう」(同)

 とはいえ、早期では症状が見えづらい肺がん。自覚症状がなくとも、定期健診受診が一番だ。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2019年3月11日号より抜粋