「日本の大学では入学時に、理系、文系など自分の進路を決めなくてはいけません。ところがアメリカのリベラルアーツカレッジでは、専門は大学3年までに決めればいい」

 進路を含め、ほとんどのことを大学に入ってから自分の考えで決められることに魅力を感じ、アメリカの大学を目指す生徒も多いという。

「そもそも本校が音楽と並んで力を入れてきたのが英語。帰国生を積極的に受け入れてきたため、以前から海外留学を目指す生徒は少なくなかった。本格的に増えてきたのは初めて名門コーネル大学に生徒が合格した10年頃からですね」

 そう話すのは、洗足学園中学高校英語科教諭の山元惣一朗さんだ。15年度は、1学年約240人から、のべ21人もの生徒が海外大学に合格した。ハーバード大やイエール大などの名門校から、小さな難関リベラルアーツカレッジまで、合格先のバリエーションも豊かだ。

 14年以降は留学の相談に乗ってくれるネイティブのカレッジカウンセラーを設置して、週に1度、生徒たちの留学の相談に乗るようになった。

「高3でネイティブの先生がエッセイの書き方を指導するなどの入試対策を行っています。高2までは普段の勉強に加えてTOEFLやSATの勉強をするほか、できるだけさまざまな校外活動などを経験するように指導しています」(山元さん)

 12年度にハーバード大に合格した生徒は、東大にも合格。「日本でも人脈を作りたい」といったん東大に入学して数カ月通い、9月のアメリカの大学の入学式に合わせて退学したそうだ。

「彼女の場合は、アジアの貧しい子どもたちを救うため、経済を学びたいという明確な目標がありました。一方、やりたいことを見つけにアメリカの大学を志望する生徒も多い。日本の限られたネットワークを飛び出すことで、学びたいこと、やりたいことの選択肢も格段に広がります」(同校の田中友樹教頭)

 例えばハーバードでは、日本人の留学生は約100人なのに対して、中国人留学生は約1千人。少ない日本人留学生を増やそうと、わざわざ同校まで足を運んで自らの魅力をアピールするアメリカの大学の担当者も少なくないという。(ライター・福光恵)

AERA 7月16日号より抜粋