「今回は漫画にしようと思って一生懸命描いたので、実録というより漫画として読んでもらえるかどうか、すごくドキドキしています」

 ボビーとケンカしては死ぬと言い、薬の影響でハイになっては大量のメールを送りつけるという、作中そのままの卯月と二人三脚で出版に漕ぎ着けた小学館スピリッツ編集部の浜本邦生さんも「感慨深い」と振り返る。

「面白かったらネームにしてくださいって、あの中では鬼編集者みたいですけどね(笑)。最初はすごく動揺したんですよ。でも卯月さんに、これを出すまでは死ねないといった執念がすごくあったので、『死にます』と言われても『出してからにしましょうよ』という感じでした」

●故郷を襲った震災

 今作の巻末には、東日本大震災の経験を描いた番外編「3.11」が掲載されている。岩手県宮古市出身の卯月にとって、「人生最大のトラウマ」だというその経験を、彼女は今年の3月11日に一気に描き上げた。

「あんまりへこたれていてもいけないなと。それまで航空写真も見ていなかったんです。描いてしばらくしてから航空写真を見たら、知っている家が全部なくなっていて、ショックで過呼吸を起こしてぶっ倒れちゃって、そこからもうダメです。まだ地元に帰れないです」

 しかし、作中で描かれている連絡の取れない友人の家が流されずに残っているのは、航空写真から確認することができた。

「『良かったー』って、本当にほっとして。もし漫画見たら、うちの両親とすごく親しいから、なんか連絡くれるかもって」

 前作を出した時には一切受けなかったインタビューを、今回は受けることにした。

「前回は怖かったんですよね、内容が内容だったから。自分でもうまく話せる自信がなかったし。今回はハッピーエンドなので、落ち着いています」

 卯月とボビーにどのようなハッピーエンドが待っているかは、ぜひ読んで確かめてほしい。(ライター・濱野奈美子)

AERA 2016年12月26日号