●食品ロス改善にも役立つ

「せっかくの食材を100%活用してほしくて、この本を監修したんです」と話すのは、監修者で元東京農業大学教授の徳江千代子さんだ。

 食材を買って冷蔵庫へ入れたはいいが、使いきれずに生ゴミに──。罪悪感を抱いた経験がある人も多いだろう。

「正しく保存すれば、大根やキャベツなど大きな野菜もおいしいまま、日持ちします。食べきれないときは、刻んで干せばかさも減り、栄養価もアップします。ぬか床をひとつ持っていれば、サプリなど買わなくても、ビタミンB群やミネラルが健康的に摂れますよ」と徳江さん。

 近年注目される「食品ロス」。日本では年間642万トンの食品が食べられるのに廃棄されている。そのうち、家庭から捨てられるのは1人当たり、年間24.6キロ。ご飯換算で、茶碗164杯分だ(いずれも農林水産省および環境省の2012年度推計)。徳江さんは「食材を使い切れば、経済的だしゴミも減る。食品ロスという大きな問題の改善にもつながるんです」と話す。

「作り置き」や「常備菜」、そして「保存加工」。“おしゃれ”をまとって回帰した日本伝統の食文化が、食品ロス改善の救世主になり得るかもしれない。(ライター・浅野裕見子)

AERA 2016年10月17日増大号