報道陣からの「10年ぶりの日本出身力士の優勝」との問いに、琴奨菊は「たまたま自分がその時に初優勝しただけです」と述べた(1月24日、東京・両国国技館で) (c)朝日新聞社
報道陣からの「10年ぶりの日本出身力士の優勝」との問いに、琴奨菊は「たまたま自分がその時に初優勝しただけです」と述べた(1月24日、東京・両国国技館で) (c)朝日新聞社

 大関・琴奨菊の初優勝を報じた「日本出身力士で10年ぶり」という表現。耳慣れない言い回しに違和感が表明されている。

 最後は土俵際までがぶってからの突き落としで、豪栄道を土俵に転がした。今年の大相撲初場所で、琴奨菊(32)が悲願の初優勝を遂げた瞬間だ。1敗を守り切って、賜杯をたぐり寄せた。

 これまでケガもあった。5度のカド番もあった。横綱・白鵬が34回目の優勝をした昨年の春場所では、解説の北の富士勝昭氏から、「(ふるわなかった大関の一人として)なーんか、刺し身のツマみたいになっちゃったな」というコメントさえ浴びた。

 あれだけ苦境にあえいでいた琴奨菊が、なぜ優勝を果たせたのか。専属トレーナーをつけたウェートトレーニングの効果もあっただろう。相撲取材歴の長い、元スポーツ紙記者は、「状態がよかったんでしょう。出足が鋭く、得意の左四つからがぶり寄りの必勝パターンがきいていた」と言い、こうも続けた。

「あれだけ強かった白鵬に衰えがみえる。覇気がない。日馬富士は満身創痍。鶴竜も取りこぼしが多い。横綱陣がそろって全盛期になく、勢力図が変化するなかで生まれたチャンスをつかみとった」

 快挙の余波は、土俵の外側にもおよんだ。優勝決定直後、NHKの中継画面に次のような速報が出た。

「大関・琴奨菊が初優勝 日本出身力士で10年ぶり」

 その後、各メディアも「日本出身」の見出しで報じ、称賛はソーシャルメディア上でも次々打ち上がった。一方、この「日本出身、10年ぶり」という表現をめぐって、違和感を表明する人も数知れなかった。

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