●第三経済委員会

 北にとって外貨は「体制維持の生命線」そのものだ。自国通貨の朝鮮ウォンは国外で通用せず紙くず同然。国内でさえ米ドルやユーロ、日本円、人民元がはるかに幅を利かせている。

「何をするにも外貨なしではやっていけないのが実情だ」(労働党の外貨調達部門元幹部)

 だからこそ中国やアジア、欧州などに貿易会社や北朝鮮レストランを出し、伐採工など労働者の派遣、麻薬密売にも手を染め外貨稼ぎに必死になる。

 とりわけ重要なのがロイヤルファミリーの裏資金だ。「統治資金」とも呼ばれる。彼らが楽しむ贅沢品や別荘の関連物資、軍幹部の歓心を買うため贈られるベンツなど高級外車の購入に主として使われてきた。2012年初めの金正恩体制本格スタート以来、遊園地など娯楽施設が正恩氏の肝いりで次々と平壌(ピョンヤン)に造られた。その建設にも裏資金の一部が使われたという。

 裏資金の原資は、金の国際市場への販売のほか、党、軍、政府の各機関から強制的に上納させるカネが中心とみられ、カネを海外株式市場や投資銀行で運用してもいるようだ。

 故・金正日総書記の息子たち、正男(ジョンナム)、正哲(ジョンチョル)、正恩の3人が子どものころ、いずれもスイスに留学した。当時彼らを世話したスイス駐在大使が「ロイヤルファミリーの金庫番」といわれた人物だったのも、顧客の秘密を漏らさないスイスの銀行に裏資金を預けていたためだ。

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