北朝鮮は経済的に八方塞がりだ。張氏処刑後、北の当局は「経済を意図的に破綻寸前に追い込み、金正恩体制への国民の信頼を失墜させ、軍をも味方に引き入れて政変を起こそうとした」と張氏が自白したと弾劾したが、これは経済が崩壊寸前と自ら暗に認めたに等しい。

「米国は正恩氏のスイス留学時代の友人たちからも話を聞いた。当時から予測不能で暴力的、かつ誇大妄想的な人物だったと結論づけた」(米オバマ政権のキャンベル前国務次官補。CNNのインタビュー)

 いまや「世界指折りの暴虐な独裁者」と国際社会の評価が決定づけられた正恩氏。北朝鮮は11月、国内全域に13の経済特区を作る外資誘致策を明らかにしたが、食指を動かす外資はまずあるまい。

 どうにもならなくなった北の指導部が、またも強硬路線に踏み切るのも十分あり得る。
「14年1月下旬~3月上旬に核実験やミサイル発射、もしくは韓国への軍事挑発を仕掛ける可能性がある」と韓国の国防長官が最近発言した。韓国の一部新聞は「北を脱出した張氏側近が韓国政府に渡した軍事情報に基づいた判断」と報じた。

 自信過剰でムラ気が強く、表向き阿諛追従の側近たちに囲まれた30歳の指導者は「アメリカも中国も、しょせん我が国の敵ではない」と本気で思っているかもしれないのだ。

AERA 2013年12月30日・1月6日合併特大号