金正日時代、この裏資金の調達・管理を任されていたのが「労働党38号室」という特別機関である。ところが金正恩氏の代になって間もない12年5月に38号室は解体、新たな機関に移管された。その新機関が「第三経済委員会」で、組織を実質的に取り仕切るのが労働党行政部だった。それにとどまらず、行政部は軍や党所有の他の鉱山や工場も勢力下に収め利権を急膨張させた。そのトップが行政部長の張成澤氏。11月末に銃殺された張氏の側近2人も行政部所属だ。

●統治資金の証拠を確保

 北朝鮮の核ミサイル開発に対する米国中心の経済制裁網の中、北の外貨は枯渇の危機にあるという。虎の子の裏資金も、かつて数百億円とも数千億円ともいわれたが、いまは減少の一途。だが世界各地に隠された裏資金の内実は厚いベールに覆われたままだ。

 その裏資金にまつわる「事件」が、こんどの張氏粛清と深い関係があるという。

 きっかけは13年2月に北朝鮮が国際社会の制止を無視して3度目の核実験を強行したことだった。

 ある中朝関係筋が明かす。

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