「つみたて投資枠にすべてを残して相場の下落局面までつきあうと、現金化する時期によっては元本割れしてしまう可能性もあります。そうした事態を避け、利益がプラスの世界でブレがおさまる状況をできるだけ早く作っていくのが長期運用のコツです。そうすれば、いつ投資をやめることになってもプラスの状態でリターンを得られるでしょう」

 また、年齢的にリスクをとりにくくなる50代以上や、そもそもあまりリスクをとりたくない人なら、バランス型投信だけを使って同様の投資法を実行することもできるという。バランス型投信には、株式に投資する割合が高いものから低いものまで、いくつもの種類があり、そうした商品構成を利用するのだ。

「理屈は同じです。つみたて投資枠では株式への投資割合が高いバランス型投信を選んで、よりリスクを大きくとり、利益が出て一定額たまったら、株式への投資割合が小さくてリスクの低いバランス型投信に乗り換えていくのです。これだと、先の『全世界株式』を使った手法より、リスクを抑えられます」

 いかがですか。実際の投資戦術は実践しながら学んでいけばいいので、まずはリスクコントロール型の投資を理解することから始めよう。

 金融機関選びに始まり、投資の基本を学び、投資戦術の理解にまで準備が進む中で、1年はあっという間に過ぎていくだろう。だからこそ、今すぐ準備を始める必要があるのだ。本格的な資産形成に向けてヨーイドンである。(本誌・首藤由之)

週刊朝日  2023年2月17日号

著者プロフィールを見る
首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

首藤由之の記事一覧はこちら