増田寛也 野村総研顧問(元日本創成会議座長)(撮影/小暮誠)
増田寛也 野村総研顧問(元日本創成会議座長)(撮影/小暮誠)

 団塊の世代約800万人が75歳以上の後期高齢者となり、年金・医療・介護の社会保障費が急増する「2025年問題」。もう7年しか残された時間はないが、増田寛也・野村総研顧問(元日本創成会議座長)は財政以外の「2025年問題」もあると危惧する。

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 東京都を中心とした東京圏には、財政問題とは違った「2025年問題」があります。私が座長を務めた「日本創成会議」が2015年に問題提起した「介護・医療危機」です。

 東京圏は高齢化のスピードがこれから桁違いに速くなります。しかも、75歳以上の後期高齢者が激増、25年までに1都3県で175万人も増加します。全国の増加数の実に3分の1です。ところが、それに見合った十分な介護・医療施設があるかというと、圧倒的に足りなくなる可能性が高い。土地が少ないうえ、昨今の深刻な人手不足を考えると、なおさらです。

 問題提起から時間がたちましたが、状況はあまり変わっていません。このままでは、介護施設に入れない「介護難民」が自宅で暮らすことを余儀なくされるため、街に徘徊老人がさまよったり、一人暮らしのお年寄りの孤独死が急増したりすることが予想されます。病院には、診察待ちの大行列ができるでしょう。都内の火葬場は今でも混雑していますから、これ以上死亡者が増えていくと、ちゃんとした葬儀ができるのかさえ心配になってきます。

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