「口腔ケアは日々の歯みがきだけでなく、定期的に歯科で歯石を取ってもらうなどのメンテナンスを」(同)

 嚥下リハビリで有効なのは、「おしゃべり」だ。発声の筋肉と嚥下の筋肉は9割重なっているため、話すことはのみ込みのトレーニングにもなるのだ。また、口を動かすと唾液の分泌が増えるため、口腔内で細菌が増えるのを防いでくれる。

 3番目の耳鼻科の受診だが、これは副鼻腔炎や中耳炎の治療や予防が目的。実は、肺炎球菌はその名が示すとおり肺炎の原因菌のように思われるが、中耳炎や副鼻腔炎、髄膜(ずいまく)炎など呼吸器系以外の病気の原因にもなる。慢性化すると中耳炎や副鼻腔炎から肺炎を併発する危険も。鼻や耳を常に健康に保っておくことも、肺炎の予防に役立つのだ。

 肺炎球菌ワクチンについては、最近ではさかんにテレビコマーシャルをやっているので、見聞きした人も多いだろう。国は65歳の人に対して2014年10月から定期接種を始めるとともに、経過措置として18年度まで65歳から5歳刻み(70歳、75歳、80歳……)の対象者に接種費用の一部を補助している。

 現在、肺炎球菌ワクチンには「13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)」と、「23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23)」の2種類があるが、補助の対象になるのはPPV23だけだ。ちなみに、小児の予防接種ではPCV13が定期接種になっている。

 高齢者が定期接種だけでなく、両ワクチンを接種することの有効性について、前出の川上氏は言う。

「PCV13は、鼻や咽頭の保菌を減らし、免疫反応を長続きさせますが、13種類の菌に限られます。PPV23は保菌を減らしたり、免疫反応を長続きさせたりはできませんが、23種類の肺炎球菌に対応するので、より広い範囲で感染が予防できます。両方を組み合わせることでより強く免疫ができる可能性があります」

 米国の予防接種諮問委員会では、現在、65歳以上は〈PCV13接種→(1年空ける)→PPV23接種〉という接種スケジュールを推奨している。科学的根拠に基づくスケジュールは不明で、日本では安全性と理論上の有効性の観点から、下記のような打ち方を紹介している。

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