鈴木おさむ
「極楽」加藤浩次さんはブレていない 鈴木おさむ
放送作家の鈴木おさむさん
放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、極楽とんぼの加藤浩次さんの生きざまについて。
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極楽とんぼ・加藤浩次さんが吉本とのエージェント契約終了のニュース。僕も普通にネットニュースで見て驚きました。
僕が初めて加藤さんとお会いしたのは、1994年なので、今から27年も前になりますね。フジテレビの深夜番組「とぶくすりZ」という番組に入らせていただき、その稽古場で初めて会わせていただきました。僕はその前から同じ番組に出ていた「よゐこ」のライブなどの構成をさせていただいていたので、よゐこが兄弟ならば、加藤さんはなんだか親戚のお兄さんみたいな感じに勝手に思っていました。悪い事とか笑顔で教える親戚のお兄さんっていますよね。そんな感じ。
加藤さん、本当にあの頃からブレてないのです。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。そして自分の中で絶対の順番を付けている気がします。大事にしなきゃいけないものの順番とか。1番、2番、3番とかあって、何があってもその順番は変わらない。変えない。
この人には絶対にお世話になったからと思ってる人に頼まれたら、NOはない。男から見ても本当に格好いい人です。
2年ほど前に、とあるベンチャー企業のCMをお手伝いすることになり、その時、かなり無理を承知で出演のオファーをしたら、ハートで引き受けてくれたんです。本当にね、ハートで仕事する人っていますけど、やっぱりね、年とともに変わってくるんです、人って。仕方ない。僕だってそうだし。だけど、こんなに変わらない人っているんだって人が加藤さん。順番を変えないんです。
僕は芸人さんの中でも、生きざまを見せてくれる人が大好きです。そのトップがビートたけしさんだと勝手に思っています。フライデー事件やバイク事故。人生で起きたこと全てを見せていく。格好いいところも、悪い所も。生きざまを見せつけて生きてますよね。江頭さんなんかも、僕にはそう見えています。すてきです。
とんねるずさんも、そうで、特に最近のお二人の生き方。そして、石橋貴明さんが「テレビに戦力外通告された」と言い切ってYouTubeに臨む姿。まさに生きざまです。だから貴明さんのYouTubeを見る時にも気合いが入るんですよね。
そして、加藤さんもまさにそうです。「めちゃイケ」では、奥さんとの結婚・出産から、お母さんの再婚相手との物語まで、生きざまを全て見せていました。そして相方・山本さんとの物語も……。「めちゃイケ」が終わってからもそのスタンスは変わることなく、情報番組のはずの「スッキリ」は、ある意味、加藤さんの生きざまを見せつけるドキュメンタリー番組の色も増してきている。吉本の問題の時はもちろんですが、個人的には「新しい地図」の3人に対してのスタンスにしびれた。みんなが何も言えないし、言わない中で、加藤さんはスッキリの中で、最初に堂々と声を上げていた。おかしいと思うことをおかしいと言った。
そういうところも、自分の中での「順番」を大切にする。その生きざまを見せる。だからおもしろいし、だから見てしまうんですよね。
そんな加藤さんが、吉本との契約が終了した。ネットニュースやSNSでは好き勝手に騒ぎ立てる人も多い。ここで加藤さんが、自分のSNSで本音を言うこともありません。だって、SNSをまったくやってない。そこも加藤さんらしい。そして相方の山本さんは、YouTubeでこれでもかというくらいに生き生きしている。そこがまたおもしろい。
ここはまだ通過点。これからの生きざま、楽しみにしております。
■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。主演:今田耕司×作・演出:鈴木おさむのタッグで送る舞台シリーズ第7弾『てれびのおばけ』が4月14日(水)~4月18日(日) 下北沢・本多劇場で上演。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。
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2021/03/11 16:00