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...薦で「票が減る」とギクシャク 維新や小池新党の脅威も
岸田首相と公明党の山口代表
夏の参院選を控えて、連立与党、自民党と公明党に冷たい“すきま風”が吹いている。自民党と公明党は2016年の参院選からお互いの候補者に推薦を出してきた。
1人区の自民党候補には、公明党が推薦を出してきたし、東京や大阪などで改選議席が複数となり、自民党、公明党が候補者をそれぞれ擁立した場合でも相互に推薦してきた。だが、その構図が崩れつつあるというのだ。
「公明党の推薦の有無で大きく選挙戦に影響する。早く公明党と協議して、前回と同様の協力体制をとるように党幹部に強く求める意見が相次いでいる」
こう訴えるのは、今年夏の参院選で改選を控える、自民党の現職議員だ。推薦問題がこじれるのは、自民党と公明党でお互いのお家事情がある。
自民党は1人区で公明党の推薦はぜひほしい。しかし、複数区で公明党に推薦を出すと自民党の票が減るというのだ。
一方、公明党は「複数区で自民党の支援があれば、より当確圏内が確実になる」(公明党幹部)という。
推薦問題が難航している代表的な複数区は兵庫だ。2019年に行われた前回の参院選では定数3の兵庫選挙区でトップ当選したのは、日本維新の会の清水貴之氏、公明党の高橋光男氏が2位、自民党の加田裕之氏が3位という結果だった。選挙戦終盤に兵庫県で最も人が集まる神戸・三宮駅前で行われた自民党の加田氏の演説で応援に現れたのは、当時の首相だった安倍晋三氏。
それから1時間後、安倍氏は同じ三宮駅で異例の行動に出た。公明党の高橋氏への応援演説でもマイクを握り、「国政に押し上げてほしい」と呼びかけたのだ。
当時、自民党の幹事長だった二階俊博氏も選挙戦直前、「二階俊博自民党幹事長と語る会」という講演会を大阪市内のホテルで開催。看板の下のサブタイトルは「自公政権の更なる発展の為に!」とつけられ、会場には公明党の高橋氏を応援する大きな垂れ幕が掲げられた。実質的に高橋氏の選挙戦のための講演会で、兵庫県内で会場が確保できず、わざわざ大阪で開催する力の入れようだった。
2019年の参院選で神戸入りし、公明党候補を応援した安倍首相(当時)
自民党と公明党の相互推薦で実現した選挙協力だが、地元の兵庫県連幹部らには不評だった。
「安倍氏、二階氏が公明党の高橋氏のためにマイクを握るなんてなんてありえない。その結果、自民の加田氏は出口調査では、立憲民主党の新人候補に追い上げられ、大苦戦。3万票差まで詰め寄られる薄氷の勝利でした。候補者が競合する区で公明党を推薦しても自民党にメリットはない。それどころか、どちらに票を入れればいいのかと支援者が混乱し、自民党の票が公明党に流れてしまった」
今年の参院選でも揉めているという。夏の参院選の兵庫で改選となるのは、自民党の候補は末松信介文科相だ。所属は安倍派である。2016年の参院選(定数3)では自民党の末松氏がトップ当選、2位は自民党が推薦した公明党の伊藤孝江氏、3位は日本維新の会の片山大介氏だった。末松氏と30年来の付き合いがある自民党の県議はこう語る。
「末松氏は県議から参院に転身後は戦いで勝ってきている。だが、昔から選挙には弱く、苦労してきた。維新の勢いがすごく、末松氏は公明党との関係でかなり悩んでいると聞く」
安倍派の国会議員は公明党との相互推薦についてこう疑問を呈する。
「昨年の衆院選では、日本維新の会が大阪だけではなく、兵庫県でも小選挙区で1議席、比例で8議席も獲得した。参院選ではさらなる上積みもありえます。末松氏は待望の入閣を果たしたばかり。現職閣僚が万が一、選挙区で敗れるようなことはあってはならない。安倍派として全力で当選させなければならない。自民党の票が公明党に流れると、大変なことになりかねない。今回は相互推薦はなしでもいいと思う」
ここに来て自民党と公明党の亀裂は深まるばかりという。
「自公がギクシャクしているのは、明らかに維新の脅威によるものです。最後は相互推薦すると思いますが、かなり深刻です」(政府関係者)
自民党では現在、愛知県連、神奈川県連、福岡県連の3つの選挙区で公明党との相互推薦が微妙な情勢になっているという。
自民党の鈍い反応に公明党の山口那津男代表は記者会見(17日)で、こう不満をぶちまけた。
「従来、相互推薦ということで、お互い(の候補を)推薦しあって準備を加速してきた。早くから自民党に呼びかけているが、この調子だと準備が整わない」「(公明党独自で)やっていかざるを得ない」
自民党の遠藤利明選対委員長は19日、慌てて兵庫県連を訪れ、藤田孝夫幹事長ら幹部と会談した。
「山口代表の立腹に遠藤氏が急遽、県連と直談判に及んだそうだ。何とか公明党との相互推薦に前向きの返事はしたが、まだ確定ではない。反対する声がかなりある」(前出・兵庫県連幹部)
しびれを切らした公明党はすでに都道府県の支部組織にも、山口代表の指示を伝えているという。
「今回の参院選は、維新に加えて東京都の小池百合子知事が国民民主党の玉木雄一郎代表と組んだ候補者を立ててくる可能性がある。新しい勢力も念頭に入れて、戦わねばならない。早く体制を整えないといけないのに自民党の都合ばかり主張するのは、いかがなものかと思う。山口代表が連立与党を組む自民党に対し、あそこまで不満を口にしたのだから、よほど腹に据えかねているということです」(公明党幹部)
(AERAdot.編集部 今西憲之)



