
...舎の影響? 国際系の新進校も人気集まる【中学受験2023】
開成中の入試会場に向かう受験生ら。左は新校舎
昨年までの安全志向は影を潜め、難関校の志願者が増加。開成は校舎の新築、桜蔭は23年に完成する東館の改築への期待感が好感をよびました。グローバル教育を標ぼうし、新規開校した芝国際、サレジアン国際学園世田谷も志願者を集めました。(※志願者の数は、首都圏模試センターによる2月11日時点の集計による)
* * *
■校舎や制服のリニューアルも志願者増に影響
今年は開成(荒川区)、桜蔭(文京区)と最難関の男子校、女子校の志願者が増加した。開成は1206人から1289人に、桜蔭は557人から629人に増えた。サピックス教育情報センター本部長の広野雅明さんは、こう分析する。
「新校舎の影響が大きいですね。開成は2021年に新校舎になり、教育環境が整いました。また、前・柳沢幸雄校長からの取り組みであるグローバル化が進み、海外大学への進学者も出ている。さらに運動会や文化祭などの行事も活溌なことが、受験生をひきつけています」
桜蔭も天体観測ドームや化学室、温水プールなどを擁する東館の建て替えが進んでいる。また昨年は東大理科III類合格者が13人輩出し、灘を抜いてトップに躍り出た。女子校としても初の快挙と話題になった。来年も志願者が増えそうだ。
「桜蔭は、21年、制服にスラックスを導入したこともマスコミに取り上げられ、話題になりました。正式な制服で、行事の際の着用も認められています。学校設立当初からほとんど制服を変えていなかったので非常に驚かれましたが、多様性にも配慮していると受験生や保護者からは好感を持たれたようです」(広野さん)
21年にサイエンスセンターを竣工した海城(新宿区)も2060人から2225人に増加した。地学実験室にはボーリング工事で採取した土砂の地層を展示するなど、さまざまな工夫が凝らされている。メディアにも多く取り上げられ、注目された。現在、校舎の建て替えを進めている早稲田(新宿区)も2074人から2221人に増えている。
「新校舎効果は、きれいになっただけではありません。建物や設備によって、どういう教育を目指すのかうかがい知ることができる。そういう点も評価されたのでは」(安田教育研究所代表の安田理さん)
そのほかにも難関校では、駒場東邦(世田谷区)が565人から611人、栄光学園(鎌倉市)が750人から816人、聖光学院(横浜市)が1431人から1622人、吉祥女子(武蔵野市)が1583人から1632人、雙葉(千代田区)が381人から401人へと、志願者数を伸ばしている。
来年は横浜雙葉(横浜市)が2月2日入試を新設し、1日と合わせて2回行う。2月入試の面接は廃止する。
「今まで全く動きがなかった伝統校だけに、影響は大きい。2月2日入試の鎌倉女学院(鎌倉市)、湘南白百合学園(藤沢市)などに影響を及ぼすのではないでしょうか」(安田さん)
神奈川の女子校でトップに立った洗足学園(川崎市)が、今年から入試の2科を廃止し、4科一本に絞った。
■国際系新進校の人気は安定
女子校から共学化し、校名に「国際」を冠した新進校は、今年も人気だ。芝国際(港区 ※現校名:東京女子学園)は、初年度から志願者を4033人集めた。新しい時代の教育を標ぼうし、港区の芝に12階建ての校舎を新築。校内にサイエンスインターナショナルスクールが同居するなど、グローバル教育を打ち出している。同じくサレジアン国際学園世田谷(世田谷区 ※現校名:目黒星美学園中学校)も、1061人と大勢の志願者を集めた。22年開校の姉妹校、サレジアン国際学園(北区)も増加した。
21年に開校し、2年連続で大勢の志願者を集めた広尾学園小石川(文京区)は4047人から2911人に減少。難関校に育った広尾学園(港区)と同じ教育が受けられるとして、話題になっていたが、今年の減少は、芝国際の開校が影響したものと見られる。人気の広尾学園は3451人から3802人に増加した。
「広尾学園小石川は、志願者が減ったからといって、易化したわけではありません。初年度と2年目が異常に多かった。下の層が抜けただけで、厳しい競争には違いありません」(声の教育社常務取締役・後藤和浩さん)
国際系の新進校について、後藤さんは次のように警告している。
「マスコミなどにひんぱんに登場すると、話題になって志願者が集まりやすくなります。同じ国際系でもカリキュラムが違うので内容を確認したほうがいい。また、大学実績も難関大は帰国生が占めているケースもある。そういった点も調べたほうがいいでしょう」
倍率が異常に高くなると、偏差値だけでは合否が読めなくなる。併願校は、塾の先生と相談して慎重に決めたほうがよさそうだ。
(柿崎明子)