今でも現役 東欧「炭鉱の蒸気機関車」を探訪する

アサヒカメラ

2020/02/09 08:00

バノヴィチ炭鉱坑内のヤードではSLが稼働すると蒸気やばい煙でやたらと辺りがかすんでしまった。環境にいいとは言えないが汽笛で炭鉱のヤードは活気があった。ボスニア国鉄と同じスタンダードゲージ(1475ミリ)の線路がバノヴィチ炭鉱まで来ている。ここで稼働する62形は米国から持ち込まれたC形タンク機関車である。決してスタイルがいいとは言えないが小さな車体を揺らし構内を駆け回るその姿はいとおしい。62形は小運転や坑内の入れ替え専用機で重宝されている■キヤノンEOS 7D MarkII・EF100~400ミリ F4.5~5.6L IS II USM・シャッター速度優先AE・500分の1秒(絞りf14)・ISO400(撮影/都築雅人)
バノヴィチ炭鉱坑内のヤードではSLが稼働すると蒸気やばい煙でやたらと辺りがかすんでしまった。環境にいいとは言えないが汽笛で炭鉱のヤードは活気があった。ボスニア国鉄と同じスタンダードゲージ(1475ミリ)の線路がバノヴィチ炭鉱まで来ている。ここで稼働する62形は米国から持ち込まれたC形タンク機関車である。決してスタイルがいいとは言えないが小さな車体を揺らし構内を駆け回るその姿はいとおしい。62形は小運転や坑内の入れ替え専用機で重宝されている■キヤノンEOS 7D MarkII・EF100~400ミリ F4.5~5.6L IS II USM・シャッター速度優先AE・500分の1秒(絞りf14)・ISO400(撮影/都築雅人)
 ボスニア・ヘルツェゴビナ(旧ユーゴスラビア)第2の都市Tuzla(トゥズラ)市では今でもSLを見ることができる。国内最大の火力発電所があり、周りには炭鉱が点在し、採掘された石炭は電力発電の燃料として使用されている。炭鉱から発電所まで鉄道を使って運ばれ、その運用にSLが携わっている。

【レアもの!旧ユーゴスラビアの生き残り機関車の写真はこちら】

 英国人の鉄道愛好家からボスニア・ヘルツェゴビナにはまだSLが健在だという情報をいただいた。近年になっても現役で稼働するSLが存在することに私は驚いた。友人が撮影を企画しており、誘いを受けて撮影に出かけた。

 成田空港からトルコのターキッシュエアラインズを使いイスタンブール経由でボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボに入った。航空運賃も安く日本からのフライト行程もいい。サラエボ空港で友人と合流、150キロ北にあるトゥズラに向かった。

【バノヴィチ炭鉱】

バノヴィチ炭鉱から20キロ先にあるオクトバ炭鉱へ空の貨車を置きに行く。途中2カ所の竪坑があり操業中だった。現在この区間はディーゼル機関車(DL)が担当しているが検査や機関車故障の時には82形SLが出場する。82形は1948年ユーゴスラビア製のD形(動輪4)テンダー(給水給炭)付き機関車。80年後半の内戦までユーゴスラビア時代にサラエボからニス(現・セルビア)間の山岳路線で活躍した狭軌用の機関車だ。燃料や給水補給の負担を少なくするためテンダー方式が採用された。隣国セルビアのモクラ・ゴラ保存鉄道で同形が動態保存されている■キヤノンEOS 7D MarkII・EF24~105ミリ F4L IS II USM・シャッター速度優先AE・640分の1秒(絞りf10)・-1補正・ISO400(撮影/都築雅人)
バノヴィチ炭鉱から20キロ先にあるオクトバ炭鉱へ空の貨車を置きに行く。途中2カ所の竪坑があり操業中だった。現在この区間はディーゼル機関車(DL)が担当しているが検査や機関車故障の時には82形SLが出場する。82形は1948年ユーゴスラビア製のD形(動輪4)テンダー(給水給炭)付き機関車。80年後半の内戦までユーゴスラビア時代にサラエボからニス(現・セルビア)間の山岳路線で活躍した狭軌用の機関車だ。燃料や給水補給の負担を少なくするためテンダー方式が採用された。隣国セルビアのモクラ・ゴラ保存鉄道で同形が動態保存されている■キヤノンEOS 7D MarkII・EF24~105ミリ F4L IS II USM・シャッター速度優先AE・640分の1秒(絞りf10)・-1補正・ISO400(撮影/都築雅人)
国内最大の竪坑式炭鉱で活躍する82形蒸気機関車

 トゥズラ市中心部から南西30キロにあるバノヴィチ炭鉱。国内最大の竪坑式炭鉱で坑内は上部と下部と2段に分かれている。上部の坑内から20キロ先にはオクトバ炭鉱があり狭軌軌道(760ミリ)が両炭鉱を結んでいる。オクトバ炭鉱で採掘した石炭はいったんバノヴィチ炭鉱まで持ってくる。バノヴィチ炭鉱からオクトバ炭鉱に向かって片道勾配、空の貨車をヤードに置き満載して下ろす。牽引する機関車は貨車の暴走防止として重要な役目も行っている。

オクトバ炭鉱で採掘した石炭はバノヴィチ炭鉱に運ばれる。この区間は全線760ミリの狭軌軌道である。ここオクトバ炭鉱の狭軌路線で活躍しているのが82形SLである。旧ユーゴスラビアの生き残り機関車でオクトバ炭鉱でしか見ることができない。バノヴィチ炭鉱に着くとヤードに押し込まれ、スタッフが貨車の扉を2台ずつ開き石炭を落とし、下のヤードで洗浄。石炭は下で待機している1475ミリスタンダードゲージの貨車に積み込まれる■キヤノンEOS 5D Mark IV・EF16~35ミリ F4L IS USM・絞りf5・125分の1秒・ISO400(撮影/都築雅人)
オクトバ炭鉱で採掘した石炭はバノヴィチ炭鉱に運ばれる。この区間は全線760ミリの狭軌軌道である。ここオクトバ炭鉱の狭軌路線で活躍しているのが82形SLである。旧ユーゴスラビアの生き残り機関車でオクトバ炭鉱でしか見ることができない。バノヴィチ炭鉱に着くとヤードに押し込まれ、スタッフが貨車の扉を2台ずつ開き石炭を落とし、下のヤードで洗浄。石炭は下で待機している1475ミリスタンダードゲージの貨車に積み込まれる■キヤノンEOS 5D Mark IV・EF16~35ミリ F4L IS USM・絞りf5・125分の1秒・ISO400(撮影/都築雅人)

 バノヴィチ炭鉱へ運ばれた石炭は真下に落とされ待ち受ける貨車に積み込まれる。構内では62形タンク機関車が忙しく編成を整えていた。満載になった貨車はボスニア国鉄路線を使ってディーゼル機関車が火力発電所に持って行った。沿線は丘陵区で2003年の訪問時に比べると住宅が増えていた。炭鉱関係者が多く、車の所有と新しい住宅ばかりで石炭産業の裕福さがうかがえた。

写真・文=都築雅人

※『アサヒカメラ』2020年2月号より抜粋。本誌では「番外編」として石灰石運搬用リフトやサラエボの路面電車などもレポートしている。

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