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ボスニア・ヘルツェゴビナ(旧ユーゴスラビア)第2の都市Tuzla(トゥズラ)市では今でもSLを見ることができる。国内最大の火力発電所があり、周りには炭鉱が点在し、採掘された石炭は電力発電の燃料として使用されている。炭鉱から発電所まで鉄道を使って運ばれ、その運用にSLが携わっている。
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英国人の鉄道愛好家からボスニア・ヘルツェゴビナにはまだSLが健在だという情報をいただいた。近年になっても現役で稼働するSLが存在することに私は驚いた。友人が撮影を企画しており、誘いを受けて撮影に出かけた。
成田空港からトルコのターキッシュエアラインズを使いイスタンブール経由でボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボに入った。航空運賃も安く日本からのフライト行程もいい。サラエボ空港で友人と合流、150キロ北にあるトゥズラに向かった。
【バノヴィチ炭鉱】
国内最大の竪坑式炭鉱で活躍する82形蒸気機関車
トゥズラ市中心部から南西30キロにあるバノヴィチ炭鉱。国内最大の竪坑式炭鉱で坑内は上部と下部と2段に分かれている。上部の坑内から20キロ先にはオクトバ炭鉱があり狭軌軌道(760ミリ)が両炭鉱を結んでいる。オクトバ炭鉱で採掘した石炭はいったんバノヴィチ炭鉱まで持ってくる。バノヴィチ炭鉱からオクトバ炭鉱に向かって片道勾配、空の貨車をヤードに置き満載して下ろす。牽引する機関車は貨車の暴走防止として重要な役目も行っている。
バノヴィチ炭鉱へ運ばれた石炭は真下に落とされ待ち受ける貨車に積み込まれる。構内では62形タンク機関車が忙しく編成を整えていた。満載になった貨車はボスニア国鉄路線を使ってディーゼル機関車が火力発電所に持って行った。沿線は丘陵区で2003年の訪問時に比べると住宅が増えていた。炭鉱関係者が多く、車の所有と新しい住宅ばかりで石炭産業の裕福さがうかがえた。
写真・文=都築雅人
※『アサヒカメラ』2020年2月号より抜粋。本誌では「番外編」として石灰石運搬用リフトやサラエボの路面電車などもレポートしている。