高血圧の要因は多くありますが、日本人で多いのは塩分の過剰摂取です。塩分を摂取すると血液中のナトリウム濃度が高くなり、血液の浸透圧が高くなるため血管内に水を多く引き込み、血液量が増えることなどにより血圧が上がります。

 ほかにも、加齢、肥満、飲酒、運動不足、ストレス、睡眠不足、遺伝的な体質なども血圧を上げる要因です。例えば、ストレスや睡眠不足があると、自律神経のバランスが崩れて交感神経の働きが活性化し、それにより分泌されるホルモンの作用で血圧が上がります。

 それと同じメカニズムで、睡眠中に呼吸が止まることを繰り返す「睡眠時無呼吸症候群」の人も高血圧になりやすいと山岸医師は話します。

「この病気になると、本人は眠っているつもりでも実際には十分な睡眠がとれておらず、体は慢性的な寝不足の状態になります。典型的には眠気を伴いますが、寝不足なのに眠気を自覚しない場合があり、疲れやすいと捉える患者さんも多く、本人が気づきにくいのがこの病気の特徴といえます。薬が効きにくい高血圧では、睡眠時無呼吸症候群が潜んでいることがあります」(山岸医師)

 喫煙も、交感神経の働きが活性化したり、血管が収縮したりすることで一時的に血圧を上昇させます。

「さらに、喫煙すると尿量が減る傾向があり、ナトリウムが排泄されずに体内に再吸収されるため、血液量が増えることでも血圧が上がります」(野出医師)

 また、高血圧の人が喫煙すると、高血圧によって引き起こされる脳梗塞(こうそく)などの病気になる確率が相乗的に高くなります。

■自覚症状がない高血圧には「早期治療」はもちろん「予防」が重要

 高血圧の最も怖い特徴は、自覚症状がないことです。「サイレントキラー」という異名の通り、気づかぬうちに重症化し、ある日突然、生命に関わる重篤な病気を引き起こすことも少なくありません。

「血圧が上がるということは、心臓の仕事量が増えるということ。高血圧は心臓に負担をかけると同時に、動脈硬化も引き起こします。それにより、心不全や心筋梗塞、狭心症、脳梗塞や脳出血などを起こしやすくなり、認知症を発症するリスクも高まります。血管が硬くなることで高血圧になるとお話ししましたが、一方で、血圧が高いことで血管の内壁が傷害されるということも起こります。血管がもろくなり、血管が裂ける『解離性大動脈瘤(りゅう)』などの病気も起こりやすくなります」(野出医師)

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高血圧は肥満や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病とも関連が深い