実際にあった「何か」を患者さんが話してくれることも多いそうです。

 これに対して、歯科衛生士は、「大変でしたね」「今日はしっかりクリーニングをするから大丈夫ですよ」「これからまた、できる範囲で歯みがきを頑張っていきましょうね」

 といったやりとりをします。

 歯科衛生士は患者さんと二人三脚で、歯を守っていきたいのです。

 定期検診は患者さんの希望があれば、何年も続きます。

「出張が続いていたのですか?」

 は、そうした関係性から出てくる言葉です。

 歯科衛生士によれば、出張が続くと普段と違って、歯みがきがていねいにできないために、口の中が汚れる人が多いそうです。

 それまできれいな口を保てていた人で、急に口の中が汚れてしまっているようなこともあります。ストレスで睡眠不足が続いたりすると、免疫力の低下が起こり、歯をみがいていても、歯周病が悪化するケースは珍しいことではありません。

 また、患者さんの中には、すごく頑張って一日何回もみがいているのに、けっこう汚れている人もいます。テクニックの問題ですが、こうした人に、「みがけなかったのですか?」は禁句です。私も若いころ、患者さんに、「ちゃんとみがいているわよ!」と怒られた経験があります。

 こうした人は逆にほめてあげなければなりません。「みがいているけれど、みがけていない人」(歯科医や歯科衛生士がみればわかります)は、たいていの場合、前歯などみがきやすいところはピカピカで、歯の裏側や奥歯が汚れています。

 そこで、次のような言い方をしています。

「頑張っていらっしゃるのがよくわかります。特に前歯なんかは完璧です。いいですねーー。欲を言えば、歯の裏側やすき間のところ、ここを注意して、歯ブラシの毛先をあててみがいていただくと、もっとよくなりますよ!」

 歯科の役割は、患者さんに歯みがきを含むセルフケアの大切さを理解してもらい、日々取り組んでもらうことです。

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信頼関係の構築が必要