歯科で歯科衛生士に口の中をチェックされたとき、「忙しかったのですか?」と聞かれたことはありませんか? 歯科衛生士によれば、「何かあったのですか?」「出張が続いていたのですか?」などと聞く場合もあるようです。これらのメッセージに込められている意味とは? なぜ、歯科衛生士はこのような言い方をするのでしょうか。歯周病専門医の若林健史歯科医師に聞きました。
* * *
今回のギモンについて、当院のベテラン歯科衛生士2人に聞いてみました。歯科衛生士は治療後の定期検診で、主に口の中のクリーニングや歯みがき指導を担当します。
このとき、歯に汚れが残っている、つまり、歯をみがけていない患者さんに、そのことを伝えるために、よく使う言葉だと言っていました。私も患者さんに同じような言い方をすることがあります。
「(汚れていますが)歯をみがけなかったのですか?」
と言わないのは、もうおわかりかと思いますが、患者さんを嫌な気持ちにさせたくないから。
そんなことを言わずとも、患者さんのほとんどがすでに、「みがけていないな」という自覚があるからです。なのに、それを指摘されたら、気分がよくないでしょう。次の検診には足を運びにくくなってしまうかもしれません。
歯科に定期的に通ってくれる患者さんの多くは、歯みがきの大切さもよくわかっています。しかし、私も含め、理想的な歯みがきを毎日続けることは難しい。
仕事が忙しかったり、眠くて、歯みがきをしない日もあるでしょう。子育てなど家庭の事情で歯みがきどころではなかったり、みがきたくても、みがけない様々な理由を抱えています。
また、風邪やコロナで寝込むなど、実際に、「何かがあった」人もいるわけです。
だからこそ、歯科衛生士は「何かあったのですか?」と聞くのです。つまり、この言葉には患者さんに何か困りごとがあったのではないかと、心配する気持ちも込められています。