岸田文雄首相
岸田文雄首相

「大学入学共通テスト」を目前に控え、日本全国の新規感染者数は1万人を超えた。文部科学省は共通テストを受験できない受験生のための救済策を急遽、発表したが、試験4日前での突如のルール変更に大学、受験生からは戸惑いが多く出ている。感染力の強いオミクロン株の対策として、岸田文雄首相はワクチン・治療薬の早期の確保などに取り組むとしているが、AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料で、ワクチン・治療薬の確保に目途が立っていない実態がわかった。第5波では最大で1日2万5千人超の新規感染者を出したが、専門家からは「2月には2倍、3倍の陽性者が出る可能性があり、医療ひっ迫を引き起こす懸念が強い」と警鐘を鳴らす。

【写真】存在感なさすぎなどの批判が上がっている大臣はこの人

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「我々専門家が思っている以上の速さでオミクロンの感染が拡大している。正直、恐怖感があります」

 こう言うのは順天堂大の堀賢教授(感染制御学)だ。全国の感染者数は1月4日に1千人を超え、8日には8400人、そして12日には1万人を超えた。

 感染が急拡大した要因は感染力の強いオミクロン株だと見られる。堀教授は昨年末、これまでのデルタ株とオミクロン株が置き換わるのは2月中旬頃、感染のピークは3月に来ると予測をしていた。しかし、附属の順天堂医院ではすでに感染者の8割がオミクロン株に代わっているという。

 このスピードはこれまでの変異株を凌駕する。昨年春に大阪で医療崩壊を引き起こしたアルファ株に置き換わるのには6週間、東京五輪中に猛威をふるったデルタ株に置き換わるのに4週間かかったのに対し、オミクロン株は2週間程度で代わる勢いだと堀教授は見る。さらに、「短期間に急速に感染者が増えると、感染者数のピークが高くなります。そうすれば、重症患者も増え、医療供給体制をひっ迫させる」と言う。

 他方で、いまオミクロン株に対して楽観論が出てきている。オミクロン株は感染力が強いものの、重症化率が低く、病原性がデルタ株よりも半分から6割程度少ないと言われている。前東京都知事、元厚労大臣の舛添要一氏はネット番組で「限りなく普通の風邪に近づいてきている」、テレビ番組でもお笑いコンビ・ブラックマヨネーズの小杉竜一氏が「東京の重症者は4人。これでもっと気を引き締めてとか言われると気絶しそう」などと発言し、一定の支持を集めている。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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楽観論には重症化率がもう一桁さがる必要がある