「警戒」の文字が表示される中、JR大阪駅前を通行する人たち
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 しかし、専門家の意見は違う。堀教授はこう語る。

「仮にオミクロン株の病原性がデルタ株よりも6割少ないとしても、感染者数が1.6倍増えれば、入院を必要とする患者の数は同じ。現時点で正確な予測は難しいですが、昨年夏に猛威をふるったデルタ株よりも、2倍、3倍は感染者を出す可能性がある。いまは若い人を中心に感染していますが、今後は家庭を通じて高齢者にも感染が拡大する。今後、高齢者を中心に重症者が出て医療体制をひっ迫させる懸念があります。そのような状況になる限り、社会の行動を制限せざるを得ない。楽観論を語るには、重症化率があと一桁は低くなる必要がある」

 オミクロン株の抑制策としていま重視されているのは、3回目の追加接種のためのワクチンと、治療薬だ。岸田首相は11日に、高齢者などを対象にする3回目接種の前倒し、高齢者だけではなく一般の人の接種数も増やしていく、現在供給を進める米メルク社製だけではなく、米ファイザー社の経口薬も2月中の実用化を目指すなどと表明した。

 ワクチンや治療薬がしっかりと確保され、供給されれば安心だが、官邸関係者は「首相は先手先手をアピールするが、実は交渉はうまく進んでいない」と打ち明ける。

 どのような状況なのか。AERAdot.が独自に入手した政府の内部資料によると、ワクチンの交渉についてはこう記されている。

<追加接種に使用するワクチンについては、ファイザーワクチン1億2千万回分、モデルナワクチン7500万回分を確保済み>

<昨年12月、今年第1四半期に1800万回分のワクチンを購入することについて、武田社及びモデルナ社と合意>

<ワクチンの更なる確保や、前倒しでの輸入に向けて、モデルナ社及びファイザー社との交渉を継続する>

 一見、ワクチン確保に成功しているように見えるが、官邸関係者は内部資料について、こう説明する。

「資料中に『確保済み』とあるワクチンは、菅政権時代に契約成功したもの。岸田首相が確保できたのはモデルナ追加購入分のみです。また、これらの確保済みワクチンについて、実際の供給スケジュールは見通せておらず、『交渉を継続する』という言葉でお茶を濁しているのが実態です。年末にファイザーのブーラCEOと会談したものの、ワクチン供給交渉は進んでおらず、1・2回目でファイザーを接種した国民の大多数が3回目はモデルナでの「混合接種」を強いられることにならざるを得ない状況は、1歩も改善していません」

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追加の治療薬の確保も感染拡大前には間に合わず