甲状腺がんの多くはゆっくり進む「治りやすい」がんだが、一方で、急速に進行するタイプでは命に関わる場合もある。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。今回、甲状腺がんの2019年の手術数が1033件で全国1位となったのは甲状腺疾患専門病院の「隈病院」(兵庫県)である。多くの患者や医療機関から「選ばれた」のはなぜか、診療体制はどうなっているのかなどを、同院副院長の宮章博医師に聞いた。
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2019年の甲状腺がん手術数ランキングの上位3位は以下の通り(週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2021』から)。
1位 隈病院(兵庫県) 手術数1033件
2位 伊藤病院(東京都) 手術数905件
3位 野口病院(大分県) 手術数447件
隈病院の近年の甲状腺がん手術数は、17年は900件、18年は921件であり、いずれも全国2位。14年に全国1位になって以来、5年ぶりの全国1位となった。
甲状腺がんの手術数上位は、いずれも甲状腺疾患専門病院。ほかのがんが大学病院やがんセンターなどの総合病院に患者が集まるのに対し、甲状腺がんは専門病院に患者が集まる傾向にあるようだ。
隈病院は手術数だけでなく外来患者数も多い。1日平均の外来患者数は600人を超えている。これだけの数の患者に対応しつつ、初診当日に血液検査や超音波検査を実施して、その結果の説明までおこなうようにしている。
細胞診が必要な場合は、初診日に細胞を採取し、1週間後にはその結果と治療方針を説明するようになっている。宮医師はこう話す。
「不安な気持ちを抱えたまま検査のために何度も通院するという、患者さんの精神的な負担を少しでも減らしたいのです。当院は、遠方から時間と交通費をかけて来院される患者さんも多い、という事情もあります」
神戸市の病院だが、患者の多くは兵庫県内や大阪府などの関西圏から、遠い人は北海道、沖縄県から訪れる。