隈病院では、頻繁に「検討会」が開催されているが、これも「データの解析・フィードバック」の一例といえるだろう。良性腫瘍や腫瘍以外の甲状腺疾患も含めれば、同院では毎週30~40件の手術を実施しており、毎週金曜日の午前中に、翌週に予定されている全症例を提示したうえで、重症例に関して手術前の検討会をおこなっている。

 検討会には、外科だけでなく、内科、病理診断科、麻酔科の医師、さらには看護師、薬剤師、臨床検査技師や放射線技師も参加する。「チーム医療」が広がる以前の2000年代の始めごろから、こうした“さまざまな職種参加”による検討会を続けている。

 これ以外に、週2回、午前中に30分間程度の症例検討会を開いている。ここでは、診断や治療で判断に迷ったことや日常診療での疑問点などを参加者に提示したうえで、コメントを求めている。また、全ての職種の学会予行もおこなっている。

「甲状腺がんをはじめとする甲状腺疾患は、外科的な治療だけでなく、内科的な治療による術前のコントロールが必要な場合もあり、長期にわたって服薬を続ける術後のケアも欠かせません。このため、検討会の場で服薬に関して内科の医師と相談したり、細胞診や病理診断について病理の医師にコメントを求めたりしています。また、検討会に参加していれば、ほかの医師の質問やコメントをすべて聞くことができ、私たちもそうですが、若い医師ではとくにレベルアップにつながっていると考えられます」

(文/近藤昭彦)