おおたわ:そんな考え方ができるなんて。

中野:私も「ああ、そのとおりだ」と思ったんですよ。それで自分の考えをあらためました。自分とは違う人がいるから学ぶことができる、それが結婚の醍醐味だと思いましたね。

おおたわ:中野さんの夫はそれを自分の言葉で説明できるところも、すばらしいんだと思います。自分が説明できないのに、説明しなくてもわかってくれとなると、夫婦そろって苦しくなっちゃう。

中野:私自身、夫に対して「私の気持ちをわかってほしい」というのもあまりないんですよね。自分のことは友だちが理解してくれていればそれでいい。

おおたわ:私は共感度がもともと低いので、子どものころから「私の気持ちなんて、人にはわからない」と思って生きてきたんですよ。夫に対しても、自分のことをわかってほしいとはあまり思っていなくて、「私の人生を邪魔してほしくない、荒立ててほしくない」というぐらいです。

中野:「あなたのことを私はわかっていますよ」と近寄ってくる人に、ろくな人がいた試しがないです。そういう人は、こちらの心のスキマに入り込んで操作しようとしているのかもしれない。

おおたわ:「君はこういうタイプなんでしょう」っていってくる人ね。

中野:そもそも「家族だからわかり合える」というのは、家族というものの価値を高く見積もりすぎている人が多いのということなのかもしれませんね。

おおたわ:サザエさん的な家族、ということなんでしょうか。三世帯で同居して、お父さんはがんばって仕事をして、でお母さんは家でご飯を作っている、子どもたちは時々きょうだい喧嘩をするけれど、それでも夜になればみんなで笑って夕食卓を囲む……あれこそが家族なんだと、刷り込まれちゃっているのかもしれないですね。実際には、そんな家族がたくさんいるわけでもないのに。

中野:それが普通だと思って家族に期待をすると、ひずみやきしみが出てくるのでしょう。

おおたわ:私はそもそも人に期待しないんです。それは、家族だけでなく仕事においても。期待して、それが叶わなくて、自分が傷ついてボロボロになっていくのは耐えられないと思っちゃうんです。だから夫とも、「本当にダメなときには、別れましょう。それはしょうがないことです」と思って結婚を決めました。

中野:それってネガティブだと思われるかもしれませんが、私はおおたわさんらしい、冷静な判断だと思いますよ。

(構成/三浦ゆえ)