おおたわ:中野さんは外出自粛期間中、どうでした?

中野:私のところも夫婦ふたりの生活ですが、基本的にふだんからあまり干渉しないということもあり、特段変わりはなかったですね。お互いにひとりでも生きていけるんですよ。でも、結婚していたほうが何かと楽しいよね、というぐらいの感覚で一緒にいるので。まぁ、夫の洗濯物を干し方が気に入らないとか、そういう些末なことはありますが(笑)。

おおたわ:うちもありますよ、洗濯物問題。「あなたのジーンズの色が、私の服に移っちゃったじゃない!」って。でも、夫が洗濯して干してくれているのに、そこだけ文句をいうなんて、私のほうがとんでもない妻なのかもしれない(笑)。中野さんの『毒親』に、「近すぎる関係性では、相手が思い通りにならないと攻撃的になる」というようなことが書いてありましたよね。距離って大事だと思います。距離感の取り方が上手じゃないから、揉めてしまう。親子なんて特にそうです、近すぎるんですよ。

中野:最も近い関係性のひとつですもんね。だからこそ、「ああいうことをいわれた」「こういうことをしてくれなかった」っていつまでも忘れられないんです。適度な距離があって、親に何をされても「ああ、あなたも大変なんですね」と思えれば、そこまで苦しくはならないのではないかと思います。

おおたわ:親子でも夫婦でも、こっちに迷惑をかけたり巻き込んだりするようなことがなければ、どう生きようがその人の自由なんです。私の母は依存症だったので、そうもいかなかったんですけど。

中野:たとえばここに、ペットボトルのキャップがあるんですけど、これは何色に見えるかという話しになったとき、妻は白に見えるといい、夫は黄色に見えるといいます。これを「白なのに、なんで黄色に見えるっていうんだろう。おかしい。白に見えなきゃいけないのに!」といってもしょうがないんですよね。

おおたわ:「あなたには白に見えるんですね」と割り切って生きていくほうがいいですね。家族であっても、その人のものの見方や生き方をどうこういう権利はどこにもないんですよ。

中野:ところが私も結婚当初、「白だよね?」をやったことがあるんですよ。私自身にとって生きるというのは、目標を決めてそこに向かって進んでいくことを意味しているんですけど、そんな私にとって夫の生き方は、お気に入りのお花畑でずっと遊んでいるように見えたんです。それを指摘したら、「どうしてお花畑で遊んじゃいけないの? 僕はきみのやり方をいいと思うよ。僕はそれに口出ししたことはないでしょう。それなのにきみはどうして僕を変えようとするの?」って。

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中野信子さんが感じた結婚の醍醐味