おおたわ史絵さん(撮影/写真部・掛祥葉子)
おおたわ史絵さん(撮影/写真部・掛祥葉子)
中野信子さん(撮影/写真部・掛祥葉子)
中野信子さん(撮影/写真部・掛祥葉子)

 新刊『母を捨てるということ』で、麻薬性の鎮痛剤への依存症に陥った母のことを明かした、医師であり、テレビコメンテーターとしても活躍するおおたわ史絵さん。母の話は長年、おおたわさんのなかでタブーであり、人に聞いてもらおうと思ったこともなかったという。

【おおたわ史絵さんとの対談で、独自の結婚感を明かしてくれた中野信子さんはこちら】

 家族の問題は“外”には出さず“内”で解決する――そう思っている人は多いだろう。コロナ禍がはじまって以来、DVや虐待が世界的に急増していると報告されている。外出自粛やリモートワークなど、生活様式の変化によって生じたストレスのはけ口が家族に向かっているのだという。問題が“内”にこもればこもるほど、深刻化する。

 脳科学者で、『毒親』(ポプラ社)など脳科学の視点から人間関係を解き明かす著書も多い中野信子さんと、おおたわさんとが「家族との距離」について対談する。

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おおたわ:人間は環境の変化にとても弱い生き物だから、何かが変わるということ自体がものすごくストレスになりますよね。うちは子どもがいなくて夫婦ふたりで、しかもどちらも医療従事者なので、外出自粛が呼びかけられた期間中もそれまでと同じように仕事していたので大きな影響はなかったのですが、これまで月曜から金曜まで毎日仕事や学校に行っていた家族がずっと家にいるというのは、たいへんな変化です。1日3食、家族全員分のご飯を作らなきゃいけなくなるとか、洗濯物が増えるとか、あげればキリがないですが、そうした毎日のストレスが生きづらさにつながります。生きづらさっていうのは、依存症の元凶にもなります。

中野:依存症のうちで最も多いのはアルコールですが、コロナ禍において酒類の売上が伸びているといわれていますね。

おおたわ:外に飲みに行けないぶん、家飲みが増えているそうです。人は生きづらいと感じると、それを解消しようとセルフメディケーション(自己治療)を必要と  します。お酒を使ってそれをするとアルコール依存症になるかもしれないし、子どものゲームをする時間が長くなればゲーム依存症になるかもしれない。あとは暴力ですね。夫婦間や親子間の暴力に依存して、自分の生きづらさをなんとかしようとする人もいるでしょう。

中野:不安な気持ちが人間関係をぎくしゃくさせるというのは、大いにありえます。閉ざされた空間において、家族間でも考えが合わない人がいると問題は深刻になりやすいようですね。

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外出自粛期間中の夫婦関係は?