日本で2番目の地下鉄となる大阪市営地下鉄の場合、1933年5月20日の御堂筋線梅田~心斎橋の開業時から、機械換気設備が設けられた。さらに、1956年8月6日から梅田駅を皮切りに世界初の駅冷房を導入。工事費用が高価なため、スローペースながら順次導入が進められた。

 一方、営団地下鉄は1965年に「高温高湿対策委員会」を設置し、1971年7月1日から銀座駅の銀座線エリアと日本橋駅の全エリア(銀座線、東西線)に駅冷房の使用を開始した。

■地下鉄車両の冷房サービスは神戸市営地下鉄から始まった

 1960年代、車両の冷房は新幹線や優等車両といった“高嶺の花”が中心だったが、1970年代に入ると、車両冷房は通勤電車にも広がった。しかし、地下鉄の車両に冷房を搭載すると排熱量が増えるほか、特に集電方式が線路脇に敷設された第三軌条方式の場合、地下トンネルの断面が小さいため、見合わせていた。

 地下鉄初の冷房車は、先述した架線から集電する東京都交通局の10-000形試作車で、車両の排熱を抑える電機子チョッパ制御(当時の省エネ車両)を採用し、加えて頭上の架線をパンタグラフで集電することから、冷房装置の搭載が可能になったのである。

 しかし、実用化に至らず都営新宿線開業前までに撤去。すなわち乗客が冷房サービスの恩恵を受けることはなかった(ただし、平成に入ってから再搭載された)。

 地下鉄初の冷房運転は、1977年3月13日に開業した神戸市営地下鉄の1000系だ。こちらも電機子チョッパ制御、パンタグラフ集電の車両である。神戸市交通局は、地下鉄では初めて「開業時から車両の冷房化率100%」という金字塔を打ち立てた。

 第三軌条方式で初の冷房車は、大阪市営地下鉄御堂筋線用の10系試作車で、1977年、中間車2両に冷房装置を搭載し、試験を実施。良好な結果を得たため、1979年登場の量産車で実用化に至った。トンネル断面の関係で、冷房搭載部分は車内の天井が若干低くなったが、快適性が大幅に向上し、乗客から好評を博したことは言うまでもない。その後、冷房装置が薄型化され、最新の30000系では天井がフラットになった。

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エスカレーターの片側空けも関西発