■抗菌、抗ウイルスも関西が積極的

 新型コロナウイルスの感染防止対策として、全国的に、しかも急速に広まったのが、車内に「抗菌、抗ウイルス」を施行すること。安心して乗車できるよう、鋭意努力している。

 日本の交通事業者で初めて採り入れたのが大阪市交通局(現・大阪市高速電気軌道)で、2004年11月、市バス(現・大阪シティバス)に導入。大阪市営地下鉄、ニュートラムでも2011年10月から2年かけて全車両に施行された。車内に「抗菌、消臭、抗ウイルス施工済」のステッカーが貼付され、快適な環境で乗客をもてなす。

 JR西日本でも2007年と2009年、特急形車両の喫煙車を禁煙車に変更する際、煙草のニオイを除去し、快適な環境を乗客に提供するため、特急「サンダーバード」用の車両を中心に施工された。2020年に入ると、特急以外の車両、駅のエレベーターの押しボタンにも抗菌、抗ウイルス対策を施した。

 関東地方では、JR東日本が2006年に導入したE233系で、吊り手(吊革)を抗菌仕様としたが、抗ウイルス、消臭対策は施されていない。

 関西の鉄道がいち早く導入した背景として考えられるのは、「人に対する思いやりが関東より上」だということ。関東の場合、鉄道に限らず効率を優先するあまり、人柄や手間暇を重視しない傾向にあるのではないだろうか。(文・岸田法眼)

岸田法眼(きしだ・ほうがん)/『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人刊)、『論座』(朝日新聞社刊)、『bizSPA! フレッシュ』(扶桑社刊)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』(アルファベータブックス刊)がある。また、好角家でもある。引き続き旅や鉄道などを中心に著作を続ける。