プロレスラーの藤原喜明 (c)朝日新聞社
プロレスラーの藤原喜明 (c)朝日新聞社

 プロレスは勝敗とともに説得力が重要となる。

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 タイトル戴冠歴がなくとも、心に残り続ける名選手が多いのはそのためだ。記憶に残る選手の多くは『必殺技』を備えている。それらは技自体の完成度などとともに、秀逸なネーミングにインパクトがある。

 日本プロレス史に欠かせない『必殺技』は、何年経っても色あせない。力道山(日本プロレス)の「空手チョップ」は袈裟斬りの要領で相手選手を叩く打撃技。名前からでもどのような技かを頭に浮かべやすい。そして日本を代表する武道を技名につけたことで、外国人選手をなぎ倒す姿が戦後復興をもイメージさせた。威力抜群の「空手チョップ」はフィニッシュ、状況打開など、力道山になくてはならない伝説的技だ。

 また同様に記憶に残りやすい技名で言えば、ジャイアント馬場(全日本ほか)の「16文キック」がある。209cmの長身を支える大きな足を突き出すキックは、世界中で知られる技となった。ちなみに馬場の本当の足のサイズは約34cmで本来なら14文だという(1文=2.4cm)。16文にした理由は諸説あるが、語呂も良くなったように感じられる。

 国内外に広く浸透しているのは「延髄斬り」も挙げられる。アントニオ猪木(新日本)が生み出したとされる一撃必殺技は、ジャンプして相手の後頭部を足の甲部分で蹴るもの。日本国外でも使用され、その際にも「エンズイギリ」と呼ばれる。「延髄斬り」はほかにも、天龍源一郎(全日本、WARほか)などの代名詞でもあった。また齋藤彰俊(ノアほか)は「スイクルデス」という名称で使用している。ちなみに猪木が選挙活動時「消費税に延髄斬り」というキャッチフレーズを掲げたことでも有名。

 ネーミングによって、同じ技が異なった表情を見せることも多い。代表的なのは、相手選手の首から胸にかけて上腕をぶつける「ラリアット(アート)」。常にトップ外国人であり続けたスタン・ハンセン(新日本、全日本ほか)の「ウエスタン・ラリアット」が最も有名だ。

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叫び声から命名された技も