海外において日本人名が技名として呼ばれているものもある。藤原喜明(新日本、UWFほか)「フジワラ・アームバー」とウルティモ・ドラゴン(闘龍門ほか)の「アサイ・ムーンサルト」だ。「フジワラ・アームバー」は「ワキ固め」として知られ、脇の下で相手の腕を固め、ヒジや肩を決める関節技。木戸修(新日本、UWFほか)などU系と言われる選手の得意技でもある。もともと柔道や柔術にも存在する技で、プロレス界最高の使い手として認知された藤原に敬意を表し呼ばれている。

「アサイ・ムーンサルト」は日本では「ラ・ケブラーダ」として知られる。場外に落ちた相手へエプロンから蹴りを入れ、自らはセカンドロープに飛び乗りバック宙で相手にぶつかって行く飛び技。ドラゴンが本名・浅井嘉浩時代にメキシコで習得したとされ、今でも海外では「アサイ・ムーンサルト」と呼ばれている。

『必殺技』はレスラーの顔であり、ファンに対して説得力を持たせるものだ。劣勢に立たされようが、「この技が出れば勝てる」と信じられるもの。そして試合に負けたとしても「あの技が見れたから良いや」と納得させる。一朝一夕ではできあがるものではない。

 ハードな練習や修羅場をくぐり抜けてきたキャリアによって、1つの『必殺技』に重みが加わる。そこには人としての器の大きさなど、生き様すべても集約されると言って過言ではない。そして、素晴らしい技名がインパクトを増加させてるのは間違いない。伝説的な名技とともに、今後、どのような新しい必殺技、そして技名が生まれるのか楽しみである。(文・山岡則夫)

●プロフィール
プロフィール/山岡則夫1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。