ラグビー南アフリカ戦、負傷退場する日本代表・福岡堅樹選手(C)朝日新聞社 
ラグビー南アフリカ戦、負傷退場する日本代表・福岡堅樹選手(C)朝日新聞社 
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7月27日、ラグビー・パシフィックネーションズカップでフィジー代表を相手にトライを決める福岡選手(C)朝日新聞社
7月27日、ラグビー・パシフィックネーションズカップでフィジー代表を相手にトライを決める福岡選手(C)朝日新聞社

 ラグビーワールドカップ(RWC)2019日本大会の開幕を2週間後に控えた9月6日、埼玉・谷スポーツ文化公園(県営熊谷ラグビー場)で、リポビタンDチャレンジカップ2019 南アフリカ代表戦が行われた。南アフリカとは前回2015年のRWCイングランド大会で対戦し、「歴史的勝利」をおさめて世界から賞賛されたことは記憶に新しい。注目の試合とあって、会場には2万2258名もの観客が詰めかけ、グラウンドに熱い視線を向けた。

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 ところが、前半開始からわずか4分。ラインアウトからのボールを競り合った後、WTB(ウイング)の福岡堅樹が芝に座り込んだ。脚を伸ばしたまま、立てない姿に、観客席から声のない悲鳴が上がる。

 福岡選手はそのまま脚をひきずるようにしてグラウンドを離れ、アタアタ・モエアキオラ選手との交替が告げられた。

 福岡選手は、日本代表の得点源だ。7月から8月にかけて行われたフィジー戦、トンガ戦、アメリカ戦のすべてで、その俊足を生かして気持ちのいいトライを決めてきた。

 その福岡選手を欠いた世界ランキング10位の日本は、体格にも大きな差のある同5位の南アフリカに食らいつくが、前半7分、先制点を許してしまう。

 さらに14-0と離されたとき、福岡選手がグラウンド脇で脚を伸ばしたまま、脛のあたりを冷やしている様子が大スクリーンに映った。グラウンドを見つめる、その表情は険しい。

 日本はその後も、何度もゴールラインギリギリまで持ち込んでは、コンタクト(接触)をものともせずに粘るが、なかなかトライに結びつかない時間が続く。

 後半20分、逆サイドのWTB、松島幸太朗が受けとったパスから独走して美しいトライを決め、SO(スタンドオフ)田村優も、続くコンバージョンキックを決めて7点を返したものの、最終的には41-7と残念な結果に終わった。

「福岡選手が活躍できるかどうかが、日本の勝利のカギを握るのは間違いない」

 世界のトライ王で、元日本代表の大畑大介さんは、現在の日本チームの戦力を分析した「ラグビー 日本代表写真ガイド RUGBY PHOTOBOOK & GUIDE JAPAN 2019」インタビューでこう語っていたが、その言葉が裏付けられてしまったと言える。大畑さんは福岡選手について、こうも語っている。

「あれほど決定力のある選手はなかなかいない。世界でも十分に通用する選手です。ウィングですから、アタックは当然注目されますが、ディフェンス面も素晴らしい」(同書)

 その福岡を欠いたことは、今日のプレーに大きな影響を与えただろう。

 ジェイミー・ジョセフヘッドコーチも、試合終了後の記者会見で、「おそらくみなさん気になっているだろうから」と福岡の怪我に触れた。

「堅樹はふくらはぎを痛めた。試合開始直後に交替することになり、本人も残念だったと思うし、チームのパフォーマンスにも影響が出た」

 ジェイミーHCによれば、福岡の状態については、「いまはなんとも言えない」。

 福岡選手は、9月20日から始まるRWCと、来夏の東京五輪限りで現役に終止符を打つことを決めていると聞く。

「残り短い、一瞬、一瞬を大切にしたい」(福岡選手、同書)

 そう語り、日本代表の力となることを誓っていたそうだ。

「福岡は得点源になる重要なプレーヤー。当然、相手チームは対策を立ててくるでしょうが、 福岡がその予測を超えるプレーをできれば、相手チームに大きなダメージを与え、味方にとっては大きなエナジーになる」(大畑さん、同書)

 大畑さんの言葉通り日本チームにエナジーを与えてくれる福岡選手の姿を、ラグビーワールドカップ2019日本大会という大舞台で見られることを、いまは願うばかりだ。

 大畑大介さんによるラグビー日本代表の戦力分析や観戦ガイド、福岡堅樹選手のコメント全文のほか、姫野和樹選手、田中史朗選手、堀江翔太選手、山中亮平選手、リーチ・マイケル主将ら日本代表選手の単独インタビューは『ラグビー日本代表写真ガイド RUGBY PHOTOBOOK & GUIDE JAPAN 2019』で読むことができる。

※『ラグビー日本代表写真ガイド RUGBY PHOTOBOOK & GUIDE JAPAN 2019』(朝日新聞出版)から一部抜粋