伝説の朝ドラ「おしん」は、「辛抱」ではなく「逃げ」の天才少女の物語だった (1/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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伝説の朝ドラ「おしん」は、「辛抱」ではなく「逃げ」の天才少女の物語だった

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宝泉薫dot.
おしんの少女時代を演じた小林綾子 (c)朝日新聞社

おしんの少女時代を演じた小林綾子 (c)朝日新聞社

 もうひとつの朝ドラが好評だ。NHKBSプレミアムで月曜から土曜の朝、アンコール放送されている「おしん」のことである。最新作「なつぞら」が通算100作目の朝ドラなら、こちらは30周年記念作として作られ、大ヒットした。平均視聴率52.6%は朝ドラのみならず、日本のドラマ史における最高記録だ。

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 この2作は7時台に続けて放送されるため、朝ドラファンのなかには両方見ている人も多く、ネットでは「『おしん』のほうが面白い」「『なつぞら』が霞む」といった声も見受けられる。とはいえ、そこには違和感も覚えなくはない。「おしん」は伝説として語り継がれる一方で、酷評もされてきたからだ。たとえば「ただ『耐える』ことを訴える番組」
「お涙ちょうだいの貧乏物語」(『日本テレビドラマ史』鳥山拡)などという具合だ。

 また、脚本家の橋田壽賀子が最初に企画を持ち込んだのはTBSで、こう断られたという。

「いまどき、こんな暗くて地味なドラマはダメですよ。時代遅れです」

 ちなみに、橋田がこの作品に託したのは、物質的繁栄に浮かれる日本人への「そろそろ身の丈に合った幸せを考えてみては……」というメッセージだった。これはある意味、伝わったようで、当時の新聞には「昼の再放送を幼稚園帰りの孫に見せて無言の家庭教育に利用している」といった投書が寄せられ、政界や財界の大物も絶賛。苦労の末に角界の最高位に昇進した隆の里は「おしん横綱」と呼ばれた。こうした辛抱礼賛ブームは「オシンドローム」と揶揄もされたものだ。

 そんな36年前ですら、時代遅れで教訓くさいものだとされたドラマである。それが平成どころか、令和となった今もなぜウケているのか。いや、そもそも、辛抱礼賛だけが売りのドラマを国民の半分以上が見たりするだろうか。そのあたりを再検証したいのである。

■ただの「辛抱礼賛ドラマ」ではない

 じつはこの「おしん」、ただの「辛抱礼賛ドラマ」ではない。むしろ、前半に関しては「スーパー天才少女の成功物語」だ。橋田がこの2年前に手がけた大河ドラマ「おんな太閤記」の新バージョンだともいえる。人並みはずれて優れた人間が困難を次々と乗り越えていく姿が痛快だからこそ、国民のふたりにひとりが見るほどのドラマになったのだ。


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