伝説の朝ドラ「おしん」は、「辛抱」ではなく「逃げ」の天才少女の物語だった (2/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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伝説の朝ドラ「おしん」は、「辛抱」ではなく「逃げ」の天才少女の物語だった

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宝泉薫dot.
おしんの少女時代を演じた小林綾子 (c)朝日新聞社

おしんの少女時代を演じた小林綾子 (c)朝日新聞社

 では、ヒロインのスペックを見てみよう。明治の後期、山形の貧農の家に生まれたおしんはわずか6歳にして、口減らしの目的で奉公に出される。それを皮切りにさまざまな職を転々とし、いじめにも遭いながら、成功を収めていくわけだ。その働きぶりは常に年相応を超えていて、しかも、そのつど、スキルアップする。炊事に洗濯、掃除、裁縫はもとより、読み書き、そろばん、九九にハーモニカも習得。さらに、お花やお茶の作法を身につけ、髪結いではハタチ前に独立を果たすという具合だ。

 それだけ賢く、器用だったわけだが、それだけではない。その成功には、天性の人たらしの能力が大きく作用している。小学校の教師や元エリートの脱走兵の心を動かし、大店の大奥様や髪結いの師匠に見込まれ、同い年のお嬢様には唯一の親友だと思わせてしまう。これは恋愛にもいえることで、本人がその気を見せる前に次々と男に惚れられるのである。

 そしてもうひとつ、頑健な体と抜群の運動神経も持ち合わせていた。子供時代から寝不足を苦にせず、空腹よりも勉強を優先、肺病の姉を看病してもうつされることはない。また、同い年のお嬢様の心を完全につかんだのは、死につながる事故を身を挺して未然に防いだからだ。電柱が倒れ、その下敷きにという寸前、本人はもとより、まわりの大人も動転して固まるなか、即座に反応して救ったのだった。

 現在再放送中のヒロインは、6歳から20歳近くまで成長したが、凡人なら命を落とすか、生きる気力を失くしていただろう。その後は病気やケガも経験するものの、それも乗り越えていく。七転び八起きで生き抜き、最終的にはスーパーチェーンの創業者として老後を迎えるのである。ただ、そのぶん、学べるところは意外と少ないかもしれない。なにしろ、天才の物語だからだ。

■おしんのプライドがはじけた

 しかし、大いに学べることがある。それは「辛抱」ではなく「逃げること」だ、じつはこのドラマにおいて、おしんはしばしば逃げることで活路を開くのである。


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