作家・演出家の鴻上尚史氏が、あなたのお悩みにおこたえします! 夫婦、家族、職場、学校、恋愛、友人、親戚、社会人サークル、孤独……。皆さまのお悩みをぜひ、ご投稿ください(https://publications.asahi.com/kokami/)。採用された方には、本連載にて鴻上尚史氏が心底真剣に、そしてポジティブにおこたえします(撮影/写真部・小山幸佑)
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写真はイメージです(iStock)
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 鴻上尚史人生相談。高校時代、趣味のアニメグッズを母親に勝手に捨てられた恨みがいまだに消えず、優しくできないという53歳の男性。老い行く両親への怒りをなくしたいという相談者に鴻上尚史が勧めた、恨みを相対化できる唯一の方法。

【相談32】親への長年の怒りがおさまりません(53歳 男性 薫ラバー)

 僕は小学生ぐらいからアニメが大好きなアニメオタクです。基本は2次元の世界が大好きで、アニメを見ていれば満足。

 貯めたお小遣いで好きなビデオを買ったり、フィギュアを買ったり(あの頃、唯一好きな3次元でした)するのが楽しみでした。

 ですが、母親はそんな僕の趣味を嫌っていました。「そんな趣味、恥ずかしいから捨てなさい」と言われ続けましたが、「お小遣いとバイトで楽しんでいるんだから関係ないだろ」と言い返していました。

 高校2年のある日、家が引っ越すことになりました。僕はフィギュアやビデオを、プチプチを使って、すべて丁寧にくるみ、段ボールに詰めました。

 ところが、新しい家に着いたら、そのビデオやフィギュアたちが段ボールごとなくなっていたのです。母親に問いただすと「来年受験なのに、あんな趣味続けてる場合じゃないでしょ」と開き直っています。父は母に「勝手に捨てることないだろ」と言いながら、「まあ、お前もあの趣味じゃ女にもてないぞ」と。軽くあしらわれました。

 本当にショックで、あの時は、憤りと怒りで狂いそうになりました。そのあと家族と3カ月は口をききませんでした。

 僕は現在53歳です。結婚して妻と二人で暮らしています。やっぱり母の思惑どおりにはアニメ好きはなおらず、妻もアニメ大好きなので、一から買いなおしたアニメとフィギュアを心置きなく部屋に飾っています。

 両親はだいぶ年老いてきて、もうそろそろ介護が必要になるかもしれません。問題は、高校生の時にビデオやフィギュアを捨てられた怒りがまだおさまらないということです。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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