リオのオリンピックが終わって、次は東京オリンピックだということは知っていたので、東京オリンピックに出たいという思いもありました。先程話した通り、リオは銀メダルで終わってしまって生前、父が「勝って終わることが大事だ」と言われていて、たくさんの方からも「金メダルを目指して東京オリンピックに出てほしい」という声をもらったとき、自分も頑張らないといけないかな、頑張ろうかなという思いもあり、すごく迷ってここまできたんですけども、本当に若い選手たちが世界で活躍する姿を見ることも多くなって、この子たちにバトンタッチしてもいいのかなと思ったり、練習をする中で若い子たちの勢いも感じましたし、やり尽くしたなという思いも強くなったので、最終的に去年12月の天皇杯の試合を見たりして、その辺から心は決まりましたね。

――12月の天皇杯では解説者としてご覧になっていましたが、目の前で伊調馨選手が優勝して東京オリンピックについて話しました。心は動きませんでしたか。

 私は昔から「自分は自分、人は人」と教えられてきたので、自分自身は「やり尽くした」「やりきった」という思いのほうが強かったので、そういうふうに心は動かなかったですけれど、伊調馨選手は素晴らしい選手で、ここまで仲間として頑張ってきたので、オリンピックを目指すと馨の口から聞いたときは素晴らしいなと思いました。

――数々の功績を残しました。挙げればキリがありませんが、ロンドンオリンピックで3連覇を成し遂げました。あのときは直前のワールドカップで敗北し、「吉田選手は大丈夫だろうか」という周囲の不安も跳ね除けて勝利したオリンピックでした。「勝ったらお父さんを肩車するんだ」とお話されていて、見事に約束を果たしました。今回の引退については、天国のお父様にどう報告されたんでしょうか。

 引退会見をするという風には、自分の父はずっと思っていなかったのでびっくりしているとは思いますが、こういう形で応援してくださった国民の皆さん、ファンの皆さんに感謝の気持ちを伝えることは大事だと思うのでこういう場を設けさせていただきました。「よく頑張った」と天国から言ってくれていると思います。

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