一回表、ソフトバンクは見事な中継プレーで広島の先制点を阻止 (c)朝日新聞社
一回表、ソフトバンクは見事な中継プレーで広島の先制点を阻止 (c)朝日新聞社

 捕って、投げた柳田悠岐。

 受けて、投げた明石健志。

 2人が生んだ“120メートルの奇跡”が、ソフトバンクに「勢い」を生み、広島に生まれかけていた「勢い」を止めた。

「先制点を取られたら、相手ペースになりそうな中、1回にチームプレーで本塁タッチアウトにして『よし、いける』という感じになった。あれで行けるぞと」

 工藤公康監督が、手放しで絶賛したそのプレーは、試合開始直後の1回表に起こった。

 1死から、広島・菊池涼介が左前打で出塁する。バッターは3番・丸佳浩。シリーズ3試合で12打数1安打の打率・083、8三振の大不振とはいえ、広島にとってはまさに仕掛けどころ。この2人なら、エンドランあり、盗塁ありと、選択肢は広がる。警戒するソフトバンク先発・東浜巨の制球が乱れ、ボールが3つ続いた。

 4球目、146キロのストレート。カウントを整えにきたその1球を、丸は狙い澄ましたように打って出る。ライナー性の鋭い当たりは、センターのやや右。ヤフオクドームの最深部を目がけて、一直線に飛んでいった。

 菊池の足と、外野の間を破る打球。

 これは、先制されたな。

 その判断がつけば、まずソフトバンク側がやるべきことは、丸の進塁を1つでも抑えることだ。本塁へ送球すれば、1点を失った上に、丸に三塁へ進塁されて1死三塁になる可能性がある。そうすると、犠飛でも、内野ゴロでも、バッテリーエラーでも2点目が入ってしまう。だから、まずは二塁で止め、三塁には行かせない。傷口を広げないプレーを確実に行う必要があるシーンだ。

 ところが、だ。

 センターの柳田が、自身の左斜め方向への打球に、一直線で走り寄った。中堅右のフェンス下部に跳ね返った打球を振り向きざまに処理をすると、その惰性で左方向に体が流れた。踏ん張った右足を軸に、体を反転させて投げると、送球は“山なり”になった。その落下点に、セカンドの明石が待ち構えていたかのように位置していた。

次のページ
迷わず本塁へ送球した明石