【日本シリーズ】柳田悠岐と明石健志、“感覚”と“間隔”が生んだ「120メートルの奇跡」【喜瀬雅則】

2018/11/01 16:00

 それは、二塁ベースと、センターの定位置とのちょうど中間点あたりだった。そこからは、本塁も、二塁も、三塁も見渡すことができる。菊池の動きと丸の位置を見た上で、まず優先すべきは、丸の動きをけん制することだ。ボールを持って、明石自らが二塁方向に走り寄る、あるいは二塁のベースカバーに入っている遊撃・今宮健太に返球することだ。

 1点は仕方がない。むしろその後を考えた上で、いずれかのプレーを取るシーンだ。

 しかし、明石は迷わず、本塁へ投げたのだ。

 ダイレクト送球が捕手・甲斐拓也のミットに収まったとき、ヘッドスライディングの態勢に入っていた菊池の左手は、まだホームベースの1メートル手前にあった。

 広島は、絶好の先制機を逃した。

「いやー、すごかったですね」

 そう振り返ったソフトバンクの村松有人・外野守備走塁コーチに、柳田の捕球から明石の送球に至った、あの一連のプレーを、“解説”してもらった。現役時代には、外野手として、2度のゴールデングラブ賞も受賞している。

「柳田のイメージと、明石のイメージが合致したんでしょうね。柳田は振り向きざまでしょ?」

 柳田は、1点を防ごうと、そのわずかな可能性にかけて、素早く投げた。しかし、捕球体勢から考えれば、きれいな送球が返ってくることはない。速く返すことを優先して、半ば“適当”に投げているともいえる。

 それが、どの辺りに返ってくるのかは分からない。なのに明石は、まるで計ったかのように『そこ』にいたのだ。

「柳田が(本塁へ)1人で投げようとしたら、大きく投げてしまうことになる。カットマンに投げるとしても、あれが手前でバウンドしたり、ちょっと大きかったりしたら、明石のいいボールにつながらない」

 つまり、2人の“感覚”と“間隔”がピタリと合っていたというのが、村松コーチの指摘だ。柳田の送球が、ほんの数十センチでも左右、あるいは上下にそれていれば、さらに明石の捕球位置が、ちょっとでも前後左右にずれていれば、明石も本塁へストライク送球ができる態勢は取れなかった。

 裏を返せば、あのパーフェクトなタイミングでなければ、本塁でタッチアウトにならない。だからこそ、村松コーチは、同じ三塁コーチャーの立場として、広島・玉木朋孝コーチが本塁突入を指示したことも“当然”と見て取ったという。


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