「球場の広さとか感覚では、マツダ(スタジアム=広島の本拠地)よりも広いでしょうしね。菊池が三塁を回ろうとするときに、たぶん明石を見ますから。そのときに、明石まで柳田の送球が返ってきてなかったんじゃないですか? だから回したんでしょう」

 2人とも、運動能力の高さから、どちらかといえば、本能的なプレーを見せるタイプのプレーヤーだ。だからこそ想像外、規格外の中継プレーが生まれたのだともいえる。

「普通にやっただけッス。きっちりと投げれば、アウトだと思った。ミスさえ出なければ……ということッス」と柳田が言えば、明石も「ギータ(柳田)のスローがよかったんです。いい流れで投げられましたから」と互いをたたえた。

 「過去イチ、ですよ」

 村松コーチが、何とも独特の表現で評してくれた。つまり、過去を含めても「1番のプレー」というわけだ。決して意図された、デザインされたプレーではない。

 この辺に、おるやろ。この辺に、投げてくるやろ。

 お互いが、お互いの特徴を知り尽くしているからこそ、あの一瞬に、あの完璧なプレーが生まれたのだ。

 広島はその後、4回に鈴木誠也の本塁打での1点しか取れず、ソフトバンクを一度もリードする機会もなく、無念の連敗となった。片や、ソフトバンクは、これで本拠地・ヤフオクドームでの「日本シリーズ・11連勝」を達成。今シリーズを2勝1敗1分けと先行した。

 “奇跡のコラボ”が、両チームの明暗を分けたのだ。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。