その裏、失策を喫した明石が本塁打を放ち、ソフトバンクが先制するあたりが、野球というスポーツの妙味でもある。

 【2回表 2死無走者】
 明石の先制弾で主導権を握ったかに見えたソフトバンクだったが、先発・東浜が2回2死無走者から、日本ハムの6番・横尾俊建に2試合連続となる2号同点弾を許してしまう。さらに7番・鶴岡慎也に粘られての7球目を、中堅左へ運ばれた。

 ここで“驚異のプレー”を見せたのが、センター・柳田悠岐だった。

 鋭いゴロが、フェンス近くまで転がっていった。このケースでは、当たりに突っ込み過ぎて捕球できず、さらに体勢を崩したりすると、より先の塁にいかれてしまう可能性があるため、決して無理をせず、フェンスに当たってのクッションボールを確実に押さえるのがセオリーでもある。

 しかし、柳田は違った。グラブを伸ばして、フェンス手前で捕球すると、その場で一回転。その反動を使って、二塁のベースカバーに入っている遊撃手・高田知季にダイレクト返球を試みた。万全の体勢ではないゆえ、少し山なりの軌道になったが、これがなんと、ノーバウンド送球。高田が伸び上がってキャッチすると、素早く鶴岡にタッチしてアウト。二塁打を阻止する、超ファインプレーとなった。

「俺の“くしゃくしゃのボール”を、ジャパ(高田の愛称)が捕ったからッス。鶴岡さんを、ゆっくり走らせたし」と試合後の柳田は、笑みを浮かべながら、独特の“ギータ節”で自らのプレーを振り返ってくれた。

 【3回裏 1死無走者】
 この回先頭の5番、アルフレド・デスパイネが、センター左へ勝ち越しの2号ソロを放ち、2―1と再びリード。1死後、日本ハムは先発の杉浦稔大から井口和朋にスイッチ。その代わりばな、2球目の後、本拠地・ヤフオクドームに、今CSで初の「熱男コール」が響き渡っていた。

 左中間席へ3点目となる本塁打を放ったのは、7番・松田宣浩。CSでの過去2試合はノーヒット。不振の続く35歳は、初戦は「6番」でスタートも、2戦目とこの日は「7番」に降格していた。10打席目にして、今CS初ヒットとなる一打が、ソフトバンクに流れを引き寄せる、貴重な中押しの3点目となった。

「重苦しかったけど、これでいつもの松田らしいプレーができるんじゃない?」と、チームにも松田にもプラス効果と見抜いたのは、ネット裏で視察中していた球団会長の王貞治だった。終わってみれば、日本ハムの得点は「2」。結果的には、松田宣の一発が“勝利を決めた”形になった。

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「絶対にリベンジ」と誓った加治屋蓮の投球