【5回表 無死一、二塁】


 2点リードの5回、ここまで1失点と踏ん張ってきた先発・東浜が乱れ、先頭のオズワルド・アルシアに右前打、横尾にストレートの四球を許してしまう。ここでソフトバンクは、石川柊太にスイッチ。「出番は早かったですね。めっちゃ、早かった」と石川。今季、先発と中継ぎでフル回転しての13勝を挙げている26歳の右腕が、ここで圧巻のピッチングを見せる。

 鶴岡の送りバントを素早く処理して、まず三塁封殺。続く代打・田中賢介を、外角高めの154キロで空振り三振に仕留めて2アウト。ここで“ファウル打ちの達人”の9番・中島卓也に粘られること11球。そのすべてが150キロ超のストレートだった。

 最速155キロの剛球で真っ向勝負したのは「“半速球”でいくのが怖かったから」と石川。宝刀・パワーカーブも、スライダーも、フォークも、この場面ではすっぽ抜けて“打ちごろ”になるのを避けたかったという。だから、徹底的に力で押し、最後も152キロのストレートで一ゴロに仕留めると、日本ハムに追加点を許さなかった。

「後先を考える場面でもないし、そんな立場でもない。行けるところまで行くという感じでした」という石川は、6回に1失点、7回にはヒット2本を許して無死一、二塁としたところで降板したが、あの「5回の17球」が、日本ハムの反撃意欲をそいだことは間違いない。

 【3点リードの8回表】
 セットアッパーの加治屋蓮が、3連投のマウンドに立った。2戦目の8回、2死無走者から3本の二塁打を許し、2失点で敗戦投手となっていた。

 「絶対にリベンジ」と誓った第3戦は、その前夜、勝ち越しの二塁打を許した2番・大田との対戦で始まった。ストレートを痛打された前夜と一転、初球は123キロのカーブで入ると、そこからフォークを3球続け、最後は三ゴロ。3番の近藤健介を空振り三振、続く4番・中田翔のバットを真っ二つに折っての遊ゴロで三者凡退に仕留めると「感情があふれ出てしまった」とベンチに下がって男泣き。「本当によかった。おめでとう」と工藤は勝利監督インタビューのお立ち台で、加治屋にそう呼びかけ、奮闘をねぎらった。

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西武との戦いで“下剋上”なるか