これほど存在感のあったスーツアクターがほかにいるだろうか。NHK・Eテレの乳幼児向け番組「いないいないばあっ!」の人気キャラクター、ワンワン役の演技だけでなく声も担うチョーさんが去年、還暦を迎えた。いまから34年前、NHK教育テレビ「たんけんぼくのまち」で楽しそうに街の地図を描く、丸メガネにキャップ姿の若かりしチョーさんを覚えている人も少なくないだろう。あのとき、テレビの前で見ていた“大人になった子どもたち”へ、「頑張っていますか?」と60歳の先輩からのメッセージをもらった。
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――毎年、春になると親たちの間では「ワンワン引退説」が不安とともに広がります。去年はチョーさんが還暦を迎え、ワンワンと一緒に子育てをしてきた親にとっては心配な節目だったと思います。
そうですねー。若い役者さんはいくらでもいますからね。でもワンワン役の話が来たときに、「辞めてください」と言われるまでは、自分からは絶対に辞めないことにしたんです(笑)。死ぬまでやるつもりで。それがたまたま20年以上も続いて、僕はラッキーなんですよ。
26歳から「たんけんぼくのまち」でチョーさん役を8年間やったんですが、当時はまだ若くて、4年続いたころに、このままではダメなんじゃないかと思い始めたんです。子ども番組以外でも挑戦してみたい……って。だから自分から「辞めさせてください」って言って、8年で辞めたんです。
でも、その後、結局ドラマや映画という方向は皆無でした。そのときに自分から辞めちゃいけないんだなって実感したんですよね。「チョーさんやってよ」って言われている間は「はい、やらせてください」と言う! 「自分の方向性が……」とか偉そうなこと言って、辞めたいなんて言っちゃだめって思ったんです。
(スーツアクターで)自分の容姿が表に出ないっていうのはいいですよ! 顔は劣化しますから。アハハハ(笑)。お父さんお母さんが「ほらワンワンよ!」って言っても、この顔だと子どもたちはキョトンですからね。