昨季世界選手権で羽生に続く2位となった宇野昌磨は、団体戦のショートプログラムで好スタートを切っている。金メダル候補であるネイサン・チェン(アメリカ)ら有力選手が次々と転倒するなか、着氷が乱れた冒頭の4回転フリップ以外のジャンプすべて(後半に跳ぶ4回転トゥループ―3回転トゥループ・トリプルアクセル)を加点がつく出来栄えで決めた。唯一100点台の得点だった。練習では安定している4回転トゥループの試合での不調に悩んできた宇野にとって、五輪のリンクで練習通りの演技ができたのは、個人戦に向けて収穫だといえる。

 一方、団体戦では不調だったチェン、ミハイル・コリヤダ(ロシア)らも個人戦に向けて調整し直してくることが予想される。また、団体戦には出場していないハビエル・フェルナンデス(スペイン)、ボーヤン・ジン(中国)も高得点を出す力を持つ。4回転ジャンプを多数投入する過酷な闘いが予想されるが、その中でミスをせず、演技全体の質をどれだけ高められるかが勝敗の決め手となるだろう。スケーターがそれぞれの持ち味を出し切る、五輪の舞台にふさわしい戦いが期待される。(文・沢田聡子)

●プロフィール
沢田聡子
1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」