西武に13点を許して13連敗を喫し、球場を引きあげる巨人の高橋監督   (c)朝日新聞社
西武に13点を許して13連敗を喫し、球場を引きあげる巨人の高橋監督   (c)朝日新聞社

 気がつけば、2月1日のキャンプインまであと数日。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「魔物に魅入られた人々編」である。

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 東京ドームには魔物が棲んでいる? 打たれた田島慎二ならずとも、そう思った人が多かったはずだ。

 4月1日の巨人戦(東京ドーム)、2対1と1点リードの中日は9回裏、守護神・田島がマウンドに上がった。前年はプロ野球新記録の開幕から31試合連続無失点。森繁和監督は、チームのシーズン初勝利、そして、自らの監督初勝利を一番頼れる男に託した形だ。

 田島は村田修一に右前安打を許したものの、2死一塁。勝利まであと一人というところまで漕ぎつけた。

 ところが、次打者・坂本勇人を四球で歩かせ、2死一、二塁とした後、阿部慎之助に逆転サヨナラ3ランを打たれてしまうのだから、本当に野球は最後の最後までわからない。「ワンバウンドでも良かった。(スプリットが)狙ったところより高くなってしまった」と悔やんだときには、後の祭りだった。

 実は、この日がシーズン初登板の田島は、なぜか東京ドームと相性が悪い。前年も9月22日にギャレット、同27日に村田と2試合続けてサヨナラ弾を浴びてシーズン終了。なんと、シーズンをまたぎ、3試合続けて東京ドームの巨人戦でサヨナラ本塁打を被弾したことになる。

 ここまでめぐり合わせが悪いと、次はサヨナラ負けのないホームゲームで投げさせて、悪い因縁を断ち切ろう。森監督ならずともそう考えるところだが、にもかかわらず、ああ、それなのに……という結果が待ち受けていた。

 それから4日後の4月5日の広島戦(ナゴヤドーム)、開幕から4連敗中の中日は、8回を終わって3対2とリード。シーズン初勝利は9回表のマウンドに上がった田島の右腕に託された。ホームゲームなので、どう転んでもサヨナラ負けはない。負の連鎖を断ち切るには、うってつけの場面だった。

 ところが、この日も田島はピリッとせず、連続四球で1死一、二塁とした後、鈴木誠也に左前安打を許してしまう。

 二塁走者・丸佳浩が三塁を回り、本塁へ滑り込むが、レフト・藤井淳志の好返球でクロスプレーとなり、飯塚富司球審の判定は「アウト!」。「やれやれ、助かった……」と思いきや、広島・緒方孝市監督がリプレー検証を要求し、検証の結果、なんと、「セーフ」に覆ってしまった。

 3対3の同点となり、またしても救援失敗。試合は延長12回引き分けに終わり、中日は開幕5試合目も勝つことができなかった。その後、田島は同7日のDeNA戦(同)で初セーブを挙げ、チームも開幕8試合目で待望の初勝利。「少しはスッキリした」の言葉にも実感がこもっていた。

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 5年ぶりの日本一奪回を目指し、オフに総額30億円ともいわれる巨大補強を行った巨人だったが、5月25日の阪神戦(甲子園)から6月6日の西武戦(メットライフドーム)まで球団ワーストタイの11連敗を記録。翌7日も西武に0対3と完封負けを喫し、ついに球団史上初の12連敗となった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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13被安打、13失点、2対13で大敗…