そして、同席する芸人が口をそろえて“タカさんマジック”と話すことがある。こちらに気を使わせまいなのか、楽しい空気を断ち切りたくないという思いなのか、いつ会計に行って、いつお金を払ったのか。それが全く分からないのだ。いつの間にか全部支払いが済んでいて「今日もありがとうな」と言って、タクシーで宿泊ホテルに帰っていく。
さらに個人的な話にもなるが、数年前、いつものようにタカから連絡があった。ただいつもと違うのは「皆さんに声をかけましょうか」とこちらが尋ねると「いや、ま、今回は急だから正男だけで大丈夫」との答えが返ってきた。
当日、大阪・福島駅近くにある店で2人で食事をした。いつも通り、本当にバカバカしい話題から、仕事に関する話までいろいろな話をして、帰りがけにこちらに一言。「ま、いろいろ大変だと思うけど、困ったことがあったら言ってくれよな」と言われてハッとした。
実は、その1週間ほど前に筆者の父親が他界し、ひっそりと家族葬で送っていた。その話を人づてに聞いたタカが最後の一言を伝えるためだけに、2人だけの食事をセッティングしてくれたのだった。仕事云々関係なく、一人の人間として心が震えた。
タカの中にしっかりと息づく師匠の存在。この先、どんな流れになろうとも、この関係性が断ち切られることは絶対にない。個人的な感情も多分に乗っかった話になるが、そう強く確信している。(芸能記者・中西正男)