■タイムトラベラー

 タイムトラベラー「ルドルフ・フェンツ」の都市伝説もかなり知られた話である。

 時は1950年の6月。タイムズ・スクエアに奇妙な服装の男が現れた。緑のシルクハットにコートを着用していた。100年前の貴族か実業家のような服装であったことから、多くの人は映画のエキストラかと思ったという。現在でもニューヨークでは個性的なファッションで歩く人が多く、それだけならば注目を集めることはない。

 だが、男は突如パニックを起こして路上に飛び出し、そこに走り込んできたタクシーに跳ね飛ばされて死んでしまったのだ。

 その後、彼の身に付けていたものが多くの人の注目を集めることとなった。というのも、着ていた服は新しいのに、布地は1世紀以上前の手法で作られていた。ポケットに入っていた紙幣も古い時代のものであるのに、経年劣化はなく現行紙幣のようだったという。極めつけは、「ルドルフ・フェンツ」と記された名刺と、同名宛で消印が1876年の手紙が入っていたことだった。

 この事件を捜査した警察は、ルドルフ・フェンツを探した。その結果、見つけ出したのは、同名の男性の息子の未亡人だった。彼女によれば、夫の父にあたる義父は、1876年にタバコを吸いに行くと言えを出たまま行方不明になったそうだ。警察が行方不明者リストを調べてみると、たしかに「ルドルフ・フェンツ」の名前があった。

 というのが、ルドルフ・フェンツの伝説である。似たようなタイムトラベラーものはニューヨークに限らず、世界中でみられるが、その元ネタがこの話であるとされているのだ。実際にはSF作家Jack Finneyが発表したエピソードだったそうだ。しかし、ニューヨークでは、タイムトラベラーでなくても時代衣装で集まるパーティーとか、時の流れが止まったお店とか、ふとした瞬間、パニックになりそうな場所というのはあるので、旅行者のみなさんも注意して見てもらいたい。

■マンハッタンをつくった日本人

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