この夏休みに海外を訪れる人も多いだろう。世界中の危険地帯を取材し、『クレイジージャーニー』でも人気のジャーナリスト・丸山ゴンザレスが何度も訪れる“憧れの地”がニューヨークだ。新刊「GONZALES IN NEW YORK」(イースト・プレス)から、その都市伝説について紹介する。
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アメリカは若い国というイメージがあるせいか、伝説伝承の類が少ないイメージがあった。これは、日本やヨーロッパと比べているからであって、1776年の建国からすでに200年以上経過しており、ヨーロッパからの入植と都市の成立を考えればさらに歴史の蓄積があるので、伝説が生まれていてもおかしくない。特にニューヨークのような巨大都市の場合、まことしやかにささやかれる都市伝説というのは、すでに無数に生まれている。そのいくつかを紹介しようと思う。
■白いワニの伝説
ニューヨークの都市伝説でもっとも有名なのがこのワニである。特に白いワニとされている。これは、ペットとして飼っていたワニをトイレから捨てたら下水道で野生化してしまった。しかも、日にあたらない環境にあるため色素が退色して白くなった。さらに、下水道に含まれる特殊な汚染物質による化学反応で巨大化してしまった、というものである。
アホかとしか言いようのない荒唐無稽な話である。と言いたいところではあるが、実はそうでもない。
白のアルビノ種については、先天的に生まれるものなので、嘘なのかどうかはわからないが、ワニの発見事例については意外に多いそうだ。これは本当にペットの廃棄によるものだったり、川から下水道に上ってきたりする。ニューヨークの下水道は汚水の処理場とは別にマンハッタン島を囲むハドソン川やイーストリバーなどと直接繋がっている箇所があるからだ。
さすがに巨大化については、ありえないと断言する。というのも、下水道の衛生状態のひどさは半端なものではない。糞尿はもちろんだが、洗濯排水、道路の排水など、ありとあらゆるものがそのまま流れ込んでいる。いったいどんな化学反応が起きているのか想像もできない。実際に臭いをかいだ印象では、汚水というよりも劇薬に近い刺激臭が漂っていた。そんな場所で、生物が生きていけるとは思えない。