同じく人気の被写体であるモモンガも夜行性のため、動きのある写真を撮るために、巣穴のある木をバットでたたく人もいるという。
「モモンガも夕方になればエサを探して動き始めますし、2、3月の繁殖期なら日中も活動しています。そういうことを知らないのか、待てないのか、たたくんですね。なかには自然ガイドが引率客に見せたいがために、そういう行為をしていることもあるという話も聞きます」
山本さんは、ネイチャーフォトは風景であれ、動物であれ、本来は時間がかかるものだと思っている。それだけに、こうしたマナー違反の数々は、「待てない」ことや「自分の思いどおりにしたい」ことが原因ではないかと考える。
「あらかじめ思い描いたものがあっても、自然は絶対に思いどおりにはなりません。イメージをすること自体は問題ないですし、通い続けた先にイメージどおりの情景に遭遇したという経験は僕にもあります。でも、そうではないことがほとんどですから、現場で感じたことを元に、柔軟に切り口を変えることが大切ではないかと思うんです。また、写真教室の生徒には、『この場所にはもう行った、何回通った』と言わないほうがいいと伝えています。どこに何回通ったかではなく、そこで何を感じたかが大切。何も感じていないのに、回数だけ自慢してもしょうがないんです」
◯山本純一(やまもと・じゅんいち)
札幌市在住の写真家。北海道の自然風景、動物をテーマに撮影している。日本写真家協会(JPS)、日本自然科学写真協会(SSP)会員。
(文/吉川明子)
※アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』から抜粋
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