なので、結婚予備軍が結婚に動くためには、今まで以上に、結婚に明確な魅力を感じる必要があります。魅力を感じる人が減ったり、魅力が相対的に低くなるのなら、結婚しない人が増えていくのは道理です。結婚は、自分の人生の大きな投資でもあるので、ちょっと背中を押したぐらいでは、なかなかそちらには動かないはずです。
■プライスレスな価値が人を強く動かす
結婚に対する魅力というのは、経済学的にいえば「効用」ということだと思うのですが、ポイントは実際の効用ではなくて、心理的に期待する効用です。
例えば運送業者がトラックを買うなら、そのトラックがどれだけの「稼ぎ」につながるかという現実的で測定できる「効用」で評価すると思います。しかし、都会に住む人が自家用車を買うのは、その車でUberをやってどれだけ稼げるか……ではなく、かっこいい車に乗る自己イメージとか、運転する楽しみとか、車庫付き一戸建ての家の前にはそれなりの車がないとかっこがつかないとか、より心理的な利益が大きく影響します。ポイントは人それぞれですが、いずれにしてもその心理的な利益のために、50万円の中古車ではなく、死ぬほど働いて何百万円の外車を買ったりするわけです。
心理的な効用は青天井(プライスレス)です。結婚もプライスレスな価値を持つことを実感したのなら、それこそ死ぬほど努力をしても結婚しようとするはずです。
安室奈美恵さんが若くして結婚した時、少なからぬ女性が結婚にあこがれました。それは安室さんの生き方にあこがれるというプライスレスな価値がもたらしたもので、結果的には都のCMよりはずっと効果的だったと思います。
それなら結婚したい!というモチベーションになるプライスレスな価値は何でしょうか。
よく聞く結婚したい理由は経済的安定とか、社会的安定とか、一人は寂しい、というのは現実的な問題です。子どもが欲しいというのは、極論すれば結婚とは関係ありません。ヨーロッパの一部の国では事実婚で子どもを作るのが普通になっています。日本で同じことをすると風当たりが強いのは事実なので、その風当たりを避けたいというのはやはり現実的な問題です。