強いてプライスレスに近い動機と言えば、「好きな人と一緒にいたい」ということでしょうか。確かにそれは素朴に幸せなことだと思いますが、やはり結婚しなくても一緒にいることはできます。幸せな今の状態を「固定」したいから結婚するのでしょうか。でも、法律的に立場を固定することはできても、人の気持ちや状況を固定することはできません。
自分の存在を揺るがすほどの影響を受けた本、音楽、最近ならアニメ、そしてリアルな出会いなどの体験にプライスレスな価値があるというのは、わかりやすいことです。それが血肉になって今の自分がある、という感覚を持っている人は少なくないでしょう。
それは私が長らくご夫婦のカウンセリングをしてきて、やはり夫婦っていいな、と素朴に思う理由に似ています。(ここで言う「夫婦」とは事実婚や同性婚などさまざまな形を含みます)
■夫婦でいる価値
自分の存在を一人ぼっちにしないのと同時に、自分の存在を揺るがすほどの影響を与えてくる存在がいるということは、幸せで価値があることだと思うのです。単に寂しくないということではなくて、相手との関係の歴史が自分を作っているという意味で、相手があっての<いまここにいる自分>が存在しているということに、人生の究極の価値があると思います。(もちろん、結婚だけが、そのような究極の価値を実現するという意味ではありません)
そう書くときれいごとに見えますが、現実には大喧嘩だったり、絶望的なほどのものの見方や感じ方の違いだったりすることも少なくないので、ものすごいストレスであることも事実ですが。
多くの人が夫婦の価値を実感していないように思います。夫婦が破綻するほどの危機に直面して始めて、パートナーとの関係はかけがえのないものだと気づく、ということも少なくありません。
今度の東京オリンピックの頃に親になりそうな世代の人々が生きているのは、結婚以外にも人生を費やす価値のある選択が沢山ある人々です。